新規解熱鎮痛抗炎症薬開発を目指したPGE_2合成酵素の基盤研究
【研究分野】生物系薬学
【研究キーワード】
PGE_2 / PGE_2合成酵素 / シクロオキシゲナーゼ / アラキドン酸代謝 / ノックアウトマウス / 炎症 / 癌 / 解熱鎮痛抗炎症薬 / プロスタグランジンE2 / PGE合成酵素 / 潰瘍性大腸炎 / 生殖 / 抗炎症薬 / RGE_2合成酵素 / 免疫組織化学 / PGE2 / PGE2合成酵素
【研究成果の概要】
本研究では、哺乳動物に存在する3種類のPGE_2合成酵素(mPGES-1,mPGES-2,cPGES)の細胞および個体レベルでの機能を明らかにすることを目的とした。mPGES4は刺激誘導性の核膜酵素であり、培養細胞において二種のシクロオキシゲナーゼ(COX)分子種のうち誘導型のCOX-2と比較的選択的に機能的にカップリングしてPGE_2を産生した。mPGES-2は構成的に発現しているゴルジ膜酵素で、N末端の限定分解により細胞質に遊離し、常在型のCOX-1および誘導型のCOX-2の両者とカップリングしてPGE_2を産生した。cPGESは細胞質に構成的に発現しており、Hsp90との会合およびカゼインキナーゼ2によるリン酸化による活性制御を受け、COX-1依存的にPGE_2を産生した。mPGES-1ノックアウトマウスは通常飼育下では正常に発育し、繁殖にも異常は見られなかったが、痛覚モデルや炎症性肉芽形成モデル、炎症性関節炎モデル、癌の増殖転移モデルなどにおいて野生型マウスと比較して軽度の表現型を示し、炎症や癌などの病態に関わるPGE_2の産生に寄与する主要PGES分子種であることがわかった。一方潰瘍性大腸炎モデルでは、mPGES-1ノックアウトマウスは野生型マウスと比較して症状の増悪傾向が観察され、消化管粘膜保護に関わるPGE_2産生にも本酵素が関与することが示唆された。したがってmPGES-1を阻害する化合物は新規の解熱鎮痛抗炎症薬あるいは抗腫瘍薬として期待される反面、消化管潰瘍などの副作用が生じる可能性が懸念される。cPGESノックアウトマウスは出生直前の時期に致死となった。本マウスでは皮膚や肺など一部の臓器に分化異常が生じており、これらの臓器中のPGE_2量は顕著に減少していた。一方、心臓や肝臓などの見かけ上障害を生じていない臓器のPGE_2量は野生型マウスとほぼ同程度であった。しかしながら、これまでにPGE_2の産生に関わる代謝系上流の酵素やPGE_2受容体のノックアウトマウスに同様の表現型は報告されておらず、cPGESノックアウトマウスの激しい表現型はPGESとしての機能以外のメカニズムの欠損により発症している可能性が高いものと考えている。
【研究代表者】