Dok類縁アダプター分子による細胞機能調節機構
【研究分野】細胞生物学
【研究キーワード】
シグナル伝達 / 蛋白質 / 組織・細胞 / アダプター / リン酸化 / 細胞・組織
【研究成果の概要】
チロシンキナーゼは細胞外環境からの情報が細胞内シグナルへと変換される際に必須のシグナル分子であり、その多くはドッキング蛋白質と呼ばれるアダプター分子をリン酸化することによって細胞内シグナルを適切に制御している。申請者らは新規ドッキング蛋白質としてDok-1を発見し、その類縁分子であるDok-2と共にサイトカイン受容体やLPS受容体の下流において、骨髄球細胞の造血や自然免疫応答の恒常性の維持に必須のシグナル分子として機能していることを解明してきた。そこで、本基盤研究においては、T細胞におけるDok-1/2の機能について検討し、両者がT細胞受容体シグナルの抑制因子であり、獲得免疫の負の調節因子として機能していることを明らかにした。また、この抑制機能にはC末端領域にあるSH2結合配列が不要であることから、既知のアダプター分子としての機能とは異なる作用機構が予見された。さらに、Dok-1/2と同じく血球に高発現するDok-3については、Dok-1/2とは異なり、そのチロシンリン酸化によってGrb2と会合することにより、間接的にRasの活性化を阻害し得ることを解明した。既に、Dok-1/2/3三重欠損マウスの樹立にも成功し、造血系細胞に高発現するDok類縁分子全体の機能解析を進めている。
他方、我々は新規のDok類縁分子としてDok-7を同定し、それが、筋特異的な受容体型チロシンキナーゼであるMuSKの活性化因子として機能し、MuSKと同じく、神経筋接合部の形成に必須であることを発見した。さらに、神経筋接合部の形成不全を伴う肢帯型の先天性筋無力症がdok-7遺伝子の両アレル生の変異によって発症することを世界に先駆けて解明した。これらの発見は、細胞内因子による受容体型チロシンキナーゼの活性化と言う未知の分子機構の存在を意味するだけではなく、今までその原因が不明であった筋無力症の診断法を提示し、また、その治療法開発の基盤となる重要な知見である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
樋口 理 | 東京医科歯科大学 | 難治疾患研究所 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
真嶋 隆一 | 東京医科歯科大学 | 難治疾患研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】14,700千円 (直接経費: 14,700千円)