多様な生命活動を支える機能的RNA制御ネットワークの確立
【研究キーワード】
インスリン / RNA結合タンパク質 / ホスホリパーゼC / ニューロペプチド / 選択的スプライシング / Muscleblind-like protein / CRISPR/Cas9 / 線虫 / 学習行動 / 学習 / 神経細胞 / RNAスプライシング / C. elegans / MBNL / 選択的RNAスプライシング / トランスクリプトーム解析 / 遺伝子制御ネットワーク
【研究成果の概要】
本研究は、線虫C. elegansにおける細胞種特異的選択的スプライシングに注目し、その制御機構や役割を明らかにすることで、多様な生命活動を作り出す遺伝子発現調節機構の新しい仕組みを明らかにすることを目的とする。2021年度の研究において、神経細胞種特異的な選択的スプライシングにより産生される線虫インスリン/IGF-I受容体アイソフォームDAF-2cの産生機構及び学習行動制御に関して、以下のことを明らかにした。
-変異体及び過剰発現株を用いたリン酸化プロテオーム解析により、DAF-2cは神経系において特定のファミリーのRNA結合タンパク質(RBP)のリン酸化を促進することを明らかにした。このRBPファミリーはdaf-2遺伝子の持つカセットエキソンE11.5の包含を促進することでDAF-2cの産生を促進する働きをもつ。従って、DAF-2cはRBPのリン酸化を介したポジティブフィードバック制御により自身のアイソフォームの産生を促進するという発現制御機構が働く可能性が示唆された。
-神経細胞種特異的に産生されるDAF-2cの神経系における役割として、神経細胞種特異的ゲノム編集技術などを用いた遺伝学的解析により、DAF-2cはASER味覚神経において2種のホスホリパーゼCアイソザイムを制御することで線虫の学習行動を調節することを明らかにし、学術論文にて研究成果を発表した。また、リン酸化プロテオーム解析により、DAF-2cがリン酸化を促進するニューロペプチド受容体を同定し、この受容体及び同一ファミリーに属する受容体の変異体において、学習行動に異常を示すことを明らかにし、DAF-2cがニューロペプチドシグナルを調節することで学習行動を制御する可能性が示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)