精子膜全タンパク質のレクチンを併用したプロテオーム解析と精子機能との関連
【研究分野】産婦人科学
【研究キーワード】
ヒト / 精子 / プロテオーム / タンパク質リン酸化 / 凍結保存 / 糖タンパク / 質量分析 / アミノ酸配列解析
【研究成果の概要】
本研究ではヒト精子に発現する全タンパクのプロファイリングに加え、レクチンを用いた糖タンパクの解析、凍結保存の影響、不妊との関連、そして精子機能とリン酸化の関連を検討した。ヒト、およびマウス精子膜抽出タンパクよりヒトでは560個、マウスでは318個の独立したスポットを認め、各々118個、94個についてタンパク質の同定が可能であった。マウスとヒト精子両方ともに確認されたタンパクは、すでにプロテオーム解析によってその存在が確認されているcalreticulin、HSP90の他に、nichotinic acetylcholine receptor、G-protein coupled receptor、ZFP35、cAMP response element binding proteinなどであり、今後の精子機能解明に大きく寄与すると考えられる。
またマウスをモデルとして、精子内におけるcAMPを介するシグナル伝達系の先体反応への関与を検討した。PKA刺激剤であるH8を作用させた精子を^<32>P-ATP存在下で培養すると、先体反応が誘起されるとともにオートラジオグラフィーにてリン酸化が増強される45kDのタンパクを認め、現在このタンパクを解析中である。
臨床へのアプローチとして、不妊男性患者からの検体はゲルに現れたスポットパターンから大きく3つに分けられることが明らかになった。現在、3群間で量の顕著に異なるタンパクの同定を行い、精子機能との関連を解析中である。また凍結前後のヒト精子の膜抽出タンパクのパターン比較では、4つのあきらかに凍結保存操作後に量が減少しているスポットが認められた。
一方レクチン染色により糖タンパクを検出する試みは、残念ながら現時点では明らかな結果が得られていない。今後、レクチンカラム処理後の抽出液を展開するなど、従来の転写した膜をレクチン染色するというアプローチと異なる方法の検討が必要と考えられた。
【研究代表者】