粘菌における細胞機能の分子的機構
【研究分野】発生生物学
【研究キーワード】
細胞同期 / 細胞分化 / パターン形成 / 増殖 / 分化 / 細胞質分裂 / リン酸化タンパク質 / 細胞内情報伝達 / 細胞性粘菌 / パたーン形成 / 飢餓
【研究成果の概要】
粘菌における細胞機能の分子機構について国際共同研究を実施し、主として以下の点を明らかにした。
1)精度の高い同調培養系、および安定な細胞マーカー遺伝子と細胞型特異的遺伝子を合わせ持つ2重形質転換体を用いることによって、飢餓処理の時点での個々の細胞の細胞周期内位置がその後の発生過程での細胞分化・パターン形成に決定的に重要であることを明らかにした。すなわち、細胞周期上の増殖/分化の分岐点(PS点)の直前で飢餓処理された細胞は予定胞子細胞にのみ分化し、一方、PS点の直後に飢餓処理された細胞は予定柄細胞にしか分化しないこと、また予定胞子細胞の分化にはそれに先だって細胞周期の再開が必要であることが示された。
2)発生開始のシグナルになる飢餓の情報は、細胞内遊離カルシウム・イオン濃度[Ca^<2+>]iの一過性の上昇によって、細胞内に伝達されること、また飢餓認識・応答に関与する可能性のあるリン酸化タンパク質がいくつか見出された。
3)増殖/分化の切り換えに関与する可能性の高い遺伝子が新たに3つ単離・同定され、またこの切り換えに重要な役割を果たすと考えられる101kDaリン酸化タンパク質がタンパク質合成時のアミノ酸伸長に必須の伸長因子-2(elongation factor-2)であることが明らかにされた。
4)細胞質分裂に関して、ヒトIQGAPに相同なGAPタンパク質が細胞質分裂最終段階の中央体切断に働くこと、また37kDaの新奇タンパク質が細胞質分裂に関与することが示された。
5)cAMPへの走化性運動に関しては、酵母の類似体があるAmiAタンパク質とTrfAタンパク質の2つがともに走化性に関わることが明らかにされた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
VERON Michae | パスツール研究所 | 生化学部 | 教授 |
FIRTEL Richa | カリフォルニア大学 | サンジエゴ校・分子遺伝センター | 教授 |
WILLIAMS Jef | ロンドン大学 | MRC研究所 | 教授 |
須藤 和夫 | 東京大学 | 大学院・総合文化研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
竹内 郁夫 | Okazaki National Research Institute, President | (Kakenデータベース) |
VERON Michel | バスツール研究所 | 生化学部 | 教授 |
FIRTEL Licha | カリフォルニア大学(サイジェゴ校) | 分子遺伝センター | 教授 |
足立 博之 | 東京大学 | 大学院・総合文化研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
雨貝 愛子 | 東北大学 | 大学院・理学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】国際学術研究
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】4,900千円 (直接経費: 4,900千円)