サイトカインシグナルの増強による抗腫瘍効果の増大と新たな抗腫瘍薬の開発
【研究キーワード】
腫瘍免疫 / T細胞 / サイトカイン / エフェクター細胞 / 代謝 / CAR-T細胞 / ミトコンドリア / エフェクター / 制御性T細胞 / IL6 / SOCS3 / IL-21 / サイトカインシグナル / SOCSファミリー分子 / 低分子化合物
【研究成果の概要】
SOCS3はSTAT3を活性化するサイトカインシグナルを負に制御する。SOCS3をT細胞で欠損したマウスは強い抗腫瘍効果を示す。SOCS3欠損CD8T細胞は強いエフェクター作用を持ち、CD4T細胞では制御性T細胞が減少する。これらはSOCS3によって制御されるIL6によるものである。IL6はCD8T細胞を酸化的リン酸化よりも解糖系優位の代謝へと変化させると共に、ミトコンドリアの膜電位や活性酸素を上昇させる。これらの変化がSOCS3欠損CD8T細胞に強いエフェクター作用を与えている。ヒトのキメラ抗原受容体T細胞でSOCS3を欠損させてもマウスと同様な効果が見られ、ヒト細胞への応用が期待できる。
【研究の社会的意義】
オプジーボの登場によってこれまで治療手段のなかった癌に対して治療が可能になったが、すべての癌に効くわけではないことや、重篤な副作用の危険性や薬価の問題などがある。免疫反応を司るT細胞の性質はサイトカインによって決まるが、私はその作用を強めることで、腫瘍に強いT細胞を作り出そうと考えた。そのためにサイトカインを抑制するSOCS3をマウスのT細胞で欠損させた。SOCS3を欠損したT細胞は腫瘍に強く反応し腫瘍を拒絶する。この反応にはIL6という腫瘍にたくさん存在するサイトカインが働く。ヒトのT細胞でも人為的にSOCS3を欠損させると腫瘍に強いT細胞になることを発見し、新たな治療法に使える知見を得た。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
吉村 昭彦 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2022-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)