新規3-スチリルクロモン誘導体の口腔癌治療薬としての可能性に関する基礎研究
【研究分野】病態科学系歯学・歯科放射線学
【研究キーワード】
クロモン環 / 腫瘍選択性 / 口腔扁平上皮癌細胞 / アポトーシス / 分子軌道解析 / 細胞周期 / カスパーゼ-3 / クロモン誘導体 / QSAR解析 / 3次元構造 / アポトーシス誘導能 / subG1 / スチリルクロモン / ピペリン酸エステル / オーロン / QSAR / 置換基 / 化学記述子 / 3-スチリルクロモン類 / ヒト口腔扁平上皮癌 / 選択毒性 / 有機合成 / 作用機序 / 副作用の緩和
【研究成果の概要】
多くの抗癌剤が高いケラチノサイト毒性を示した。新たに10グループ(計156化合物)のQSAR解析を行ったところ、クロモン誘導体の多くは、高い腫瘍選択性を与えること、2-(N-cyclicamino)chromonesに属する化合物5cは、ケラチノサイト毒性が低いこと、更に興味深いことに、アポトーシスを誘導しないことを突き止めた。今回の研究によりアポトーシス誘導能のない物質の中から副作用の少ない抗癌剤が創出できる可能性が示唆された。
正常肝細胞と比較し、ヒト肝がん由来細胞に対する高い傷害性、そしてCYP3A4及びP-gpに対して有意な阻害活性を示した。消化器系がんの治療薬としての可能性を示した。
【研究の社会的意義】
我々は、天然界に存在するポリフェノールは、腫瘍選択性がそれほど高くないことを発表してきた。クロモン環が、フラボノイドの基本骨格であるため、生体に馴染みやすい。今回の研究により、クロモン誘導体の多くは、比較的高い腫瘍選択性を有すると同時に、上皮系細胞に対する毒性が、従来の抗癌剤よりも格段弱という特徴を有することが明らかになった。また、クロモン誘導体は、薬物代謝酵素や、薬物排出トランスポーターを阻害した。そのため、副作用の少ない抗癌剤治療薬の開発への寄与が期待される。また、アポトーシス誘導能がない化合物でも高い腫瘍選択性を示すため、新しい抗がん作用のメカニズムを発見できる可能性がある。
【研究代表者】