自己組織性肝小細胞の物質移動を利用したバイオ人工肝臓の開発
【研究分野】熱工学
【研究キーワード】
自己組織性 / 組織工学 / 細胞培養 / バイオメカニクス / 胆管形成 / バイオ人工肝臓 / 肝細胞 / 細胞コロニー / 幹細胞 / 分化誘導
【研究成果の概要】
細胞を用いたバイオ人工肝臓の実用化のためには,生体外において三次元細胞組織モジュールを構築する必要がある.ラットの肝臓には,幹細胞の一種と考えられる増殖能力の強い肝細胞が存在する.この小型肝細胞と名付けられた細胞を分離して非実質細胞と共培養すると,肝組織に類似した三次元構造が構築される.
小型肝細胞は,培養後2週間ほど経つと非実質細胞に囲まれたコロニーを形成し,一部の細胞は成熟化し形態的に盛り上がってくる盛り上がった肝細胞間には白い筋状の構造が形成され,培養後3〜4週間ほどで複雑に繋がったネットワーク構造を形成する.
今回我々は,この白い筋状に見える毛細胆管様構造が生体内と同様の極性を保持しているか否か検討した.また,位相差顕微鏡でのタイムラプス撮影により毛細胆管の収縮運動について解析し,再生された毛細胆管に対するEndothelin-1とA23187の収縮運動への影響について検討した.
本実験系において再形成された毛細胆管は管状のネットワーク構造を形成し,それらが協調して収縮運動を行なうことが分かった.毛細胆管の長さ方向に細胞10〜20個分の距離が離れていても,少なくとも20秒以内に同期して収縮を開始していることが分かる.また,このように急激に収縮するタイプの毛細胆管運動は,細胞1個分の長さのみが収縮することはほとんどなく,細胞数個分に渡って同期して収縮することが多い.
この毛細胆管収縮運動の協調作用は,ギャップ結合を介したシグナル伝達によって調節されていると考えられる.毛細胆管収縮のセカンドメッセンジャーである[Ca^<2+>]_iやIP_3は,肝細胞のギャップ結合を介してシグナルを伝達することができる.本研究における再形成毛細胆管においても細胞間にギャップ結合タンパク質であるコネクシン32,26の発現が認められている.
【研究代表者】