発生と変性における細胞死による神経選択機構の分子遺伝学的基盤
【研究分野】神経化学・神経薬理学
【研究キーワード】
カスパーゼ / ショウジョバエ / 遺伝学 / 神経発生 / IAPファミリー / イメージング / キナーゼ / プロテアソーム / 神経細胞死 / ショウジョウバエ / 神経変性 / タンパク質分解 / アポトーシス / JNK / 蛋白質分解 / 神経細胞 / 細胞死 / 発生 / マウス / 細胞選択
【研究成果の概要】
ショウジョウバエ遺伝子の過剰発現スクリーニング(GSスクリーニング)を取り入れることで、神経細胞死シグナルの機能的的ゲノムスクリーニングを行った。ポリグルタミンによる神経細変性に関与する遺伝子として小胞体に存在する不良品蛋白質の輸送チャネル(Sec61α)を同定した。Sec61αは、分泌経路で合成される蛋白質の小胞体への移行と、小胞体関連タンパク質分解Endoplasmic Reticulum Associated Degradation : ERADにおいて小胞体から細胞質への不良品タンパク質の輸送を担う重要なチャネルである。Sec61αをショウジョウバエ複眼や培養細胞で過剰発現すると不良品タンパク質が細胞質に逆輸送されて蓄積し細胞死が誘導されること、逆にSec61αの活性を遺伝学的に弱めることによりポリグルタミン病モデルにおいて細胞質に蓄積していた不良品タンパク質が減少し、晩発性の神経変性が回復することが明らかになった。さらに、GSスクリーニングによって、神経細胞死シグナルを発する候補遺伝子としてDmIKKεが得られた。遺伝子の機能欠損スクリーニングによってもDmIKKεが得られ、細胞死を誘導しないレベルのカスパーゼ活性を調節することを見いだした。細胞死シグナルに関与する遺伝子のスクリーニングからDmIKKεが得られたことをふまえてその基質を探索した結果、種を超えて保存されたカスパーゼ抑制因子DIAP1が同定された。DmIKKεはDIAP1をリン酸化することによってその分解を促進する。DmIKKεを生体でノックダウンすると内在性のDIAP1レベルが組織で上昇した。しかし、この状態でも発生過程での細胞死は正常におこり、ここでのDmIKKεによるDIAP1レベルの調節は細胞死以外の生理機能に関与することが示唆された。本研究が明らかにした段階的なカスパーゼ活性化による神経選択の新たな仕組みは、発生と神経変性での細胞運命決定機構に新たな視点をもたらしたものである。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(S)
【研究期間】2003 - 2006
【配分額】119,080千円 (直接経費: 91,600千円、間接経費: 27,480千円)