臨床がんの遺伝子情報維持に必要な物理化学的因子の解明とがん個別化医療への応用
【研究キーワード】
組織工学 / がん / 硬さ / 個別化医療 / 遺伝子発現 / がん細胞 / 三次元培養 / 物理化学的因子 / 生物学的因子 / 薬物感受性
【研究成果の概要】
本年度は、①物理因子として弾性率制御可能なコラーゲンゲルの表面及び内部で大腸がん細胞を培養し、弾性率のがん細胞の増殖への影響を明らかにした。コラーゲンマイクロファイバー(CMF)を用いた場合に可能な弾性率制御範囲は80 kPa以下に限られていた。本年度、遷移金属イオンを用いることで、コラーゲンが5分以内に速やかにゲル化して透明なゲルを形成できるだけでなく、1 MPaを超える弾性率を有することを新たに見出した。遷移金属イオンとコラーゲンの濃度を制御することで、数 kPaから1.2 MPaまで1000倍の幅で弾性率を制御できることが明らかとなった。本ゲルは、広範囲で弾性率を制御可能なコラーゲンゲルとして応用が期待される。
②生物学的因子として細胞増殖因子のがん細胞への影響を評価した。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の患者由来がん細胞(PDC)への影響を評価した。昨年度用いた株化細胞と同様に検討した結果、およそ同程度の濃度範囲で血管網形成が促進されることを見出した。また、弾性率を変化させて増殖因子を添加すると、血管網形成が異なる予備知見が明らかとなった。
③ハイスループットスクリーニングへ応用する目的で、96ウェル内での弾性率制御がんモデルの構築に関して最適化を行った。CMFの量と細胞数を制御することで、96ウェルの小さな体積でも培養維持できる条件を見つけることができた。
以上より、当初の予定通り研究を進めることができた。
【研究代表者】