肺線維芽細胞に焦点を当てた間質性肺炎と肺癌を結びつける分子病態の解明
【研究キーワード】
間質性肺炎 / 肺癌 / バイオマーカー / 肺線維芽細胞 / 非小細胞肺癌 / 肺線維症 / 線維芽細胞
【研究成果の概要】
間質性肺炎は喫煙とは独立した肺癌の危険因子の一つであるが、両疾患を結びつける分子病態は未解明の部分が多い。両疾患をリンクする新規機序を探るために、公共データベースを用いた解析を行い、BMPアンタゴニストの一つであるGREM1(Gremlin-1)に注目した。
今年度はまずGREM1の間質性肺炎における役割を明らかにするために、GREM1の発現解析及び機能解析を行った。特発性肺線維症(IPF)患者から得られた肺組織のscRNA-seqの公共データを用いて、肺のどの細胞でGREM1が発現しているのか調べたところ、肺/気管支上皮細胞、血管内皮細胞、免疫細胞では低発現であり、肺線維芽細胞で比較的特異的に高発現であることが分かった。その中でも筋線維芽細胞の一部で特に発現が高く、一部のコラーゲンや細胞外基質の遺伝子発現と相関していた。また、IPF患者の肺を用いたRNA-ISH及び免疫組織染色を行ったところ、fibroblastic fociにおける肺線維芽細胞においてRNA、蛋白両者の発現を認めた。
細胞実験では、qRT-PCRを行い、GREM1は気管支上皮細胞株や肺胞上皮癌細胞株では低発現、肺線維芽細胞で高発現であり、TGFβ刺激により発現が亢進することが示された。Recombinant human Gremlin-1を肺線維芽細胞に投与することで、筋線維芽細胞のマーカーであるα-SMA発現の上昇やコラーゲンゲル収縮能の亢進が認められた。一方、細胞増殖能やスクラッチアッセイでの遊走能に関しては有意な影響は認めなかった。現在GREM1に対するsiRNAを用いて、各種コラーゲンやα-SMAの発現、コラーゲンゲル収縮能などに与える影響を調べている。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)