DNAチップを利用した有害化学物質代謝動態の早期検出法の開発
【研究分野】衛生学
【研究キーワード】
DNAチップ / 発現プロファイル / 種差 / トリクロロエチレン / ジクロロメタン / 初代培養幹細胞 / DNAマイクロアレイ / 有害化学物質 / 代謝
【研究成果の概要】
平成12年、13年度には、種差があり、マウスで肝に発がん性のあるトリクロロエチレン(以下TCE)及びジクロロメタン(以下DCM)をマウス及びラットに曝露し、擬陽性が低く再現性が高いとされる、遺伝子及びESTの収載されたAffymetrix社のDNAチップを用いて肝の遺伝子発現プロファイルを得て、その解析を行った。TCE腹腔内投与実験のマウスでは、細胞増殖制御機構への変調が生じている兆しが見えたが、ラットでは脂質代謝の活性化が見えたに過ぎなかった。TCE経口投与実験では、経時的な観察により、ペルオキシゾーム増殖薬によって誘導される遺伝子の発現の増加を見た。また、リアルタイムPCR法によってDNAチップの精度を確認し、発現の変化したESTについてクローンを購入し塩基配列を読んだ。DCM経気道投与実験では、ラットにCYP2E1の発現亢進が見られた。種間の遺伝子発現プロファイルを比較するため、相同遺伝子検索プログラムを作成、TCE曝露実験で有意差があったプローブについて相同遺伝子を検索し、マウスとラットの遺伝子が対応する新たな遺伝子発現プロファイルを作成した。この遺伝子発現プロファイルに対して階層的クラスター解析を行ったところ、マウスとラットはほぼ明確に区別された。本課題の最終目的は、有害化学物質による健康障害の評価を動物実験で行う際に、どの種を用いればよりヒトに近いか、遺伝子の発現プロファイルを用いて評価することの可能性を判断することであり、マウス、ラット、ヒトの新鮮初代培養肝細胞を用いた比較実験の計画を立てた。マウスで、チトクローム系酵素の代謝活性が保たれている系を構築し、予備実験を経て、TCE曝露実験を行った。in vitro実験での曝露条件はin vivo実験の結果を踏まえ、リアルタイムPCR法て決定した。ヒトの細胞はアメリカより入荷を待っている。
【研究代表者】