分子疫学アプローチによるジクロロメタンの代謝と遺伝子影響に関する研究
【研究分野】衛生学
【研究キーワード】
有機溶剤 / 代謝 / 遺伝子多型 / ジクロロメタン
【研究成果の概要】
本研究の研究計画に対し,慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認を得たのち,研究を開始した.本年度は,ジクロロメタン(DCM)曝露作業者における疫学調査を実施し,その評価を行った.(1)曝露指標の有用性評価:2年間にわたって繰り返しDCM個人曝露濃度(DCMexp)および尿中ジクロロメタン濃度(DCMu)をGC-MS法により測定し,計128データを得た.この両指標の回帰直線は,(DCMu)=0.004x(DCMexp)+0.02(回帰係数のP値<0.001)であった.この場合の曝露濃度50ppmに相当するDCMuは0.2mg/Lと推定される.また,両指標に加えて血液中ジクロロメタン濃度(DCMb)を測定することのできた78データについて曝露指標間の関係を検討したところ,(DCMb)=0.013x(DCMexp)+0.02(P値<0.001),曝露濃度50ppmに相当するDCMbは0.65mg/Lと推定された.以上から,DCMb, DCMuとも,DCM曝露の生物学的曝露指標として有用であると示唆された.(2)遺伝子多型を考慮した血液中ホルムアルデヒド濃度(HCHOb)への影響:上記曝露指標に加え,HCHOb測定ならびにGSTT1遺伝子多型測定を行った39データで,GSTT1遺伝子多型がDCM曝露とHCHOb濃度との関係に与える影響を検討した.39名中GSTT1(+)が24名,(-)が15名で,両群のDCM曝露に差はなかった(30ppm).HCHOb濃度も,GSTT1(+)群0.97mg/L, GSTT1(-)群1.52mg/Lで有意な差は認められなかった.DCMexpとGSTT1多型を説明変数とした重回帰分析によっても有意な説明変数とはならなかった.以上から,本曝露濃度レベルにおいては,GSTT1+群のHCHOb濃度は,GSTT1-群と比較で有意な差はないと考えられる.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)