加速度のマイクロ計測による潜水性海鳥の最適採食行動の研究
【研究分野】生態・環境
【研究キーワード】
行動学 / 海洋生態 / 生態学 / 先端機能デバイス / 環境変動
【研究成果の概要】
海鳥はクジラやアザラシにくらべ体重補正するとはるかに長く深く潜水する。その生理的メカニズムの解明のため室内実験がくりかえされてきた。潜水中は酸素供給が制約されるため最適採食行動の理論的研究テーマとしても注目されている。しかしながら、潜水中のエネルギーコストと餌獲得の測定が困難なため実証研究は不十分であった。本研究は野外の海鳥の潜水行動と餌捕獲を詳細に測定して、変化する海洋環境中での最適潜水戦略を分析した。特に、動物が水中で直面する浮力と遊泳抵抗という物理的困難に対するストローク調節に着目した。そのため、自由に深く潜水する間のあしけりおよび羽ばたき運動を装着型データロガーで記録しその高い潜水能力にともなう運動エネルギーをもとめると同時に、潜水中のハビタット利用と餌獲得をカメラロガーで記録した。その結果、1)足かきによるコストの上昇と遊泳速度の上昇による移動時間の短縮の利益をてんびんにかけて足かきを調節している、という新しい仮説を提出し、2)毎秒2m程度の遊泳速度を保つために、羽羽ばたき潜水専門家と海生ほ乳類では、ストローク頻度を体重の0.3乗で小さくしているが、3)羽ばたきあるいは足けりで海中と空中の両方を移動するグループでは、この基本ラインからはずれたストローク頻度を持っており、これは、物理条件が異なる媒体の両方を、翼あるいは翼と足ひれで、それなりに効率よく移動するための妥協であることが推察された。さらに、4)飛行中の羽ばたき周波数を数分レベルで記録することによって、その潜水バウト後の体重増加、つまり採食量が推定できること、5)映像データから異なるハビタットの利用頻度とそこでの詳細な採食鼓動を解析できることがわかった。また、ベーリング海で繁殖するハシブトウミガラスの野外調査を行い、6)年によって、海氷状況の変化とともに変わる水温構造と,それによって生じる餌生物の種組成や鉛直分布の違いの影響を受け,異なる年の間で採餌潜水行動を変化させていることを明らかにした。
【研究代表者】