位相シンギュラリティに基づく心房細動のダイナミクス変容とロバスト性に関する研究
【研究キーワード】
心房細動 / 位相シンギュラリティ / スパイラルリエントリー / コンピュータシミュレーション / 興奮伝播ダイナミクス / 心筋焼灼術 / atrial fibrillation / phase singularity / visualization / computer simulation / myocardial ablation
【研究成果の概要】
(1)3次元形状のヒト心房モデルを作成し、大規模な電気生理学コンピュータシミュレーションを実施することによって、心不全や脳梗塞の大きな原因となる心房細動の不整脈現象を計算科学的に解析するシステムを構築した。このシステムにおいて、心臓全体の電気的興奮の基本となる洞調律を再現し、さらに心房細動が持続するメカニズムとなる不安定な渦巻型旋回興奮波(スパイラルリエントリー)を発生させて、心房細動の不整脈現象を3次元的に可視化した。不安定な渦巻型旋回興奮波が左右の心房を繰り返し移動する過程(興奮伝播ダイナミクス)を再現し、心房頻拍から心房細動に移行する過程を示すことができた。
(2)臨床の心房細動において、カテーテルの心内電位から心房細動をリアルタイムで映像化するシステムのデータに基づき、非発作性心房細動の持続メカニズムと新たな心筋焼灼術についての考察などを行った。
(3)3次元心臓モデルを用いた大規模なコンピュータシミュレーションによって、突然死の原因となる不整脈のブルガダ症候群を想定した心筋組織における伝導遅延領域が細動を引き起こす過程を可視化した。
(4)心筋の電位変化から振動現象としての位相を定義し、さらに、その位相のばらつきから不整脈の興奮波の伝わり方(興奮伝播ダイナミクス)を理論的に解析する位相分散解析の方法を用いて、位相マッピングの有効性を示した。さらに、心筋焼灼術の手法に対するAI導入の可能性などを示した。
【研究代表者】