中枢神経系プログラム細胞死の遺伝的制御
【研究分野】神経化学・神経薬理学
【研究キーワード】
ショウジョウバエ / 神経 / 遺伝学 / 細胞死 / スクリーニング
【研究成果の概要】
申請者はこの異所発現トラップ法を用いて、ショウジョウバエ組織に未知遺伝子群を強制発現させることにより、新規の細胞死スイッチ担当遺伝子群の同定を試みた。具体的にはGS系統のショウジョウバエを、複眼特異的にGAL4タンパク質を発現するGMR-GAL4系統と交配させ、次世代の子孫の複眼の表現型を観察する。ショウジョウバエの複眼は光受容細胞などの神経細胞を多数含む代表的な中枢神経系器官である。もし複眼に細胞死実行遺伝子が強制発現されれば、複眼はそのサイズが縮小することが申請者らによって既に示されている。さらに、細胞死誘導能が高い場合はしばしば致死になる。これらの事実をもとに、複眼の縮小およびlethalityを指標に細胞死を誘導可能なUAS異所発現トラップ系統をピックアップし、細胞死スイッチ担当遺伝子群の1次コレクション系統を作成し現在までに、5000系統のスクリーニングが終了している。このスクリーニングによって無脊椎動物では初めてのTNFファミリー分子Eigerを同定した(Igaki et al., EMBO J.,2002)。Eigerによる細胞死はカスパーゼに依存しないがJNKに依存した新規シグナル経路を用いていることが明らかになった。TNFファミリーは、さまざまな疾患に関与する多くの機能を有するタンパク質であり細胞死研究においては細胞死因子として有名で細胞死の引き金を引く分子として詳しく研究されてきた。今回、無脊椎動物であるショウジョウバエから、このファミリー分子が発見されたことによって、細胞死因子による細胞死が進化的に保存されていることが初めて示された。Eigerは、神経系の組織で多く発現されているため、遺伝学的研究に適したショウジョウバエを用いてTNFファミリー分子の神経系での新たな生理機能や細胞死シグナルの研究が発展するものと期待される。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2002
【配分額】14,400千円 (直接経費: 14,400千円)