企業内データを用いた企業間生産性格差と労働政策課題の解明
【研究キーワード】
労働経済学 / 人事経済学 / 生産性 / 健康経営 / チーム生産 / 在宅勤務 / 働き方改革 / ワークライフバランス / 労働時間 / 非正規雇用 / インセンティブ / 発明報奨金 / 高齢者雇用 / ピア効果 / 付加価値モデル / 非認知能力 / 健康 / イノベーション / 中間管理職 / 主観的評価
【研究成果の概要】
主として、5つの成果を出すことが出来た。まず、Kitagawa et al. (2021)では、大手製造業企業4社においてコロナ下の在宅勤務調査を実施し、緊急事態宣言後の生産性の低下の主要な要因は、自宅で仕事を行ううえでのPC・通信インフラの未整備や、社内外とのコミュニケーションの問題が大きいことを明らかにした。一方、在宅勤務は従業員のメンタルヘルスを改善することもわかった。2つめに、みずほリサーチ&テクノロジーズと共同で大手都市銀行の顧客企業を対象に働き方改革の実態調査を行い、働き方改革の広がりと、残業時間、離職率、企業業績への効果について検証を行った。高橋他(2021)で明らかにしたように、ROAや一人当たり売上でとらえた企業業績に対する効果は、柔軟な出退勤施策、業務選別施策、IT活用施策が正の押上効果を持つ可能性が示唆された。3つめに、Shangguan,DeVaro and Owan (2021)では、建築設計会社のプロジェクト管理データを用いて、金融不況後の需要の低下が、長時間労働の是正を通じて、生産性改善につながったエビデンスを示した。長時間労働の減少が疲労の解消・集中力の高まりにより個々人の生産性を高めただけでなく、さらにチーム内業務の再配分を通じてより生産性の高い人に傾斜配分されていた。4つめに、製造業企業1社の協力を得て、その社員に対して行った禁煙支援プログラムの影響評価を行い、禁煙は、たばこ休憩時間の解消、プレゼンティーイズムの向上、アブセンティーイズムの減少を通じて、短期的にも生産性を押し上げることを明らかにした。最後に、空輸業における人事データを用いて、客室乗務員の非正規化が、離職率を高め、出産時期を遅らせる一方、逆に正規化がそれと逆の変化を引き起こすことを示した。最後の2つの成果は2021年6月にRIETIディスカッションペーパーとして公表される。
【研究代表者】