病態のDNAメチル化解析
【研究分野】基礎獣医学・基礎畜産学
【研究キーワード】
DNAメチル化 / エピジェネティクス / 脂肪細胞分化 / ES細胞 / ジメチルスルホキシド / DNAメチル基転移酵素 / エピジェネティックス / Dnmt / 肝臓 / 脂肪細胞 / パイロシークエンス法
【研究成果の概要】
DNAメチル化はエピジェネティクス系の主要な要因である。組織・細胞特異的にメチル化状態の異なる領域(T-DMR)が哺乳類のゲノムDNAに多く存在し、それらのメチル化・非メチル化の組み合わせによる、細胞の種類に特有のDNAメチル化プロファイルが形成されている。本研究では特定の毒物などで誘導されるメチル化異常ゲノム領域を決定し、DNAメチル化プロファイル異常と病態との対応を目指した。in vitroモデル系の1つとして脂肪前駆細胞の分化前後でのメチル化変化を解析し、分化に伴いメチル化が変化するT-DMRを複数同定した。これらのメチル化状態変化には一過的な上昇あるいは減少といった変化パターンも示し、細胞の分化が従来考えられていたよりも遥かに柔軟であることが判明した。また、外来因子によって誘引される種々の病態に関する報告を重ねるとともに、ジメチルスルホキシド(DMSO)のDNAメチル化に対する影響を検討することで、マウス胚性幹細胞(ES細胞)の浮遊培養で形成される胚様体において、DMSOがゲノムDNAのメチル化異常を引き起こすことも明らかにした。DMSOはDNAメチル基転移酵素(Dnmt)の1つ、Dnmt3aの発現も特異的に促進した。Dnmt3aはがんの発生との関係も示唆されている。DMSOがエピジェネティック因子の発現にまで影響を与えることが明らかになったことで、化学物質の毒性評価などにおいて、エピジェネティクス異常の解析が必要であることが示された。さらに、過形成を示すクローンマウス胎盤で異常なメチル化を呈する遺伝子座の同定に成功し、DNAメチル化異常と病態との関連を示唆する1例を示すとともに、DNAメチル化パターンの維持にはDnmt3aおよびDnmt3bもまた必要であることや、Dnmt遺伝子もまたDNAメチル化による制御を受けていることをそれぞれ発見し報告した。
【研究代表者】