個体間の宥和関係形成を支える脳-内臓回路の比較認知神経科学研究
【研究キーワード】
鳥類 / 比較認知 / 自律神経系 / 情動 / 痛み / オキシトシン / 内臓感覚 / カラス / 宥和関係 / 優劣関係 / 親和関係 / 自律神経 / 脳
【研究成果の概要】
哺乳類において雌雄のつがい形成・維持に関わることが知られている神経ペプチド「オキシトシン」に着目し,カラスを対象とし,同性間(オス間)の宥和関係の形成・維持に関わる生理メカニズムを検討した。オス間の宥和関係はこれまで社会性哺乳類において報告されていたがそれが形成促進される環境要因は明らかではなかった。2021年度,本研究ではオス3個体を約2週間同居飼育することで,次第に2対1の社会交渉に落ち着き,オス2個体の宥和関係が形成されることを見出した。3個体同居環境で形成されたオス2個体の宥和関係は,当該2個体のみの環境に置いても維持された。このような宥和関係はオス2個体のみで長期間飼育しても形成されることはない。以上の結果から,オス間の宥和関係は当該2個体のみの交渉で必ずしも生じるものではなく,第3者の存在によって形成促進されることを示唆する。本研究は実験環境下であるが,オス間の連合・同盟といわれてきた宥和関係が当該2個体の相性や履歴ではなく,3者間あるいはそれ以上の複数者間の相互作用環境が重要な要因であることを世界で初めて示した。さらに,宥和関係の形成および維持にオキシトシンが関与するかを調べるために,尿中のオキシトシンを酵素免疫化学法によって計測する技術を確立した。この技術は,鳥類において初めて確立した技術であり,今後この技術を活用することで,個体間の社会関係におけるオキシトシンのメカニズムについて,比較・進化の観点から世界をリードする体制が整った。宥和関係の形成前後における尿サンプルの採取を現在進めており,次年度にその変化を計測する。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
茂木 一孝 | 麻布大学 | 獣医学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)