従来型キネシン分子モーターの二足歩行モデルの直接検証
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
キネシン / 微小管 / 分子モーター / 一分子計測 / 酵素反応 / 酸素反応 / 情報伝達 / 1分子計測
【研究成果の概要】
平成15-16年度の研究で、片方の頭部をモーター活性が充分低い(~10%)変異体にしたヘテロダイマーキネシンを作成して、一分子力学測定を行い、このヘテロダイマーが早い8nmステップと遅い8nmステップを交互に繰り返して微小管上を運動することを見い出したことで、世界に先駆けて二足歩行モデルを立証した。この研究の過程で、ヘテロダイマーキネシンの速いステップは、単純な二足歩行モデルでは野生型のステップと同等であることが予想されるが実際はこれよりも高い運動活性を示すという、興味深い現象が見つかった。16年度の研究から、この現象は、一方の頭部(変異体頭部)へのATP結合速度が著しく遅いことに由来した二頭間の協調の乱れが起こる事が示された。このような協調の乱れが野生型でも起こるかどうかを調べる為に、ATPとキネシンによる結合・加水分解の遅いATP類似体(GTP,CTP,UTP)を混合して野生型キネシンの一分子ナノ計測を行った。その結果、ヌクレオチド混合条件下においても、野生型キネシンは微小管上を8nmのステップで連続的に運動する事ができた。しかし、これらのATP類似体のみによるキネシンの運動速度がATPのみによる運動速度と比べて十分に低くなかった為(30-50%)、混合条件下における各々のステップがATPによるものなのか、ATP類自体によるものなのかを明確にする事ができず、野生型キネシンを用いて二頭間の協調の乱れを解析する事はできなかった。しかしながら、この過程で野生型キネシンはATP類似体存在下においてもATP存在下と同等の力(6-7pN)を発生する事を見いだした。この発見は、キネシンの細胞内機能を考える上で興味深い。つまり、細胞内に存在するATP以外のヌクレオチドが結合した場合にも、キネシン分子は、問題なく力発生機能を発揮できる事を示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
樋口 秀男 | 東北大学 | 先進医工学研究機構 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2003 - 2005
【配分額】2,800千円 (直接経費: 2,800千円)