ネオリベラリズムと戦後ヨーロッパ資本主義(1945-73年)
【研究分野】経済史
【研究キーワード】
新自由主義 / ネオリベラリズム / 戦後資本主義 / リップマン・シンポジウム / モンペルラン協会 / 市場経済 / 市場 / 戦後ヨーロッパ資本主義 / グローバリゼーション / 組織化 / 自由化 / 規制
【研究成果の概要】
研究機関中に開催した研究会議および研究組織の各メンバーによる個別の研究を通じて、1938年のリップマン・シンポジウムにおいて定義づけられた「ネオリベラリズム」が、戦後のモンペルラン協会の設立に結実し、戦後における欧米経済の再建・成長に様々な影響を与えたことを以下のように明らかにすることができた。
まず、1947年に設立されたモンペルラン協会には、ハイエクをはじめとするリップマン・シンポジウムにも参加したネオリベラリズムを信奉する経済学者、実務家たちが多数参加した。このモンペルラン協会の活動によって形成されたネオリベラリストのネットワークを通じて、戦中・戦後から1970年代までのグローバリゼーションが世界経済を席巻する以前から、欧米諸国の経済政策にネオリベラリズムが反映されていた。
具体的には、中央銀行改革について、西ドイツにおける連邦準備銀行の設立とその後の同行の為替政策、フランスにおけるフランス銀行の通貨・信用政策、さらに、アメリカにおける銀行制度改革に、市場原理を重視するネオリベラリズムの政策理念が盛り込まれていた。さらに、戦後進行したヨーロッパ経済統合においても、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体による石炭・鉄鋼市場の形成過程やヨーロッパ経済共同体の結成過程で、ネオリベラリズムの影響が見られた。だが、これらの政策形成の現場においては、市場における独占のあり方、政府による市場介入の限度について、ネオリベラリストの見解にも多様性が見られた。それは個々のネオリベラリストがもつ理念の相違のみならず、彼らがおかれていた具体的な政治・経済状況の違いから生じていた点に注目すべきである。
以上の成果は、すでに何篇かの論文として発表されているが、来年度以降、研究分担者共同執筆による研究図書として刊行されることも計画されている。
【研究代表者】