新規マウスモデルを用いた多発性骨髄腫のエピジェネティック治療法の開発
【研究キーワード】
多発性骨髄腫 / エピジェネティクス / UTX / マウスモデル / エピジェネティック治療標的
【研究成果の概要】
多発性骨髄腫では頻度は1.5~4.0%と低いものの、H3K27脱メチル化酵素UTX/KDM6Aに機能喪失型変異が認められ、予後不良因子である。興味深いことに細胞株においては変異の頻度が30~40%と高く、この変異が骨髄腫の悪性度や治療抵抗性に関与するものと考えられる。このUTXはH3K27脱メチル化に作用するのみならず、MLL3/4 H3K4メチル化酵素とCOMPASS複合体を形成し、ヒストンアセチル化酵素p300/CBPと協調してエンハンサー活性を制御する。重要なことに、COMPASS-p300/CBP構成分子 (MLL3, MLL4, UTX, p300, CBP) の機能喪失型変異は10%以上の多発性骨髄腫症例で認められる。申請者らはUtxを胚中心B細胞特異的に欠損し、多発性骨髄腫に頻度の高いRas経路の活性型変異を同時に発現するBRAFV600E:Utxfl/fl;Cgamma1-Creマウスを作成したところ、B細胞性悪性リンパ腫とともに多発性骨髄腫様の腫瘍を発症することを見出し、COMPASS-p300/CBP複合体が成熟B細胞性腫瘍でがん抑制的に機能することを証明した(論文投稿中)。その腫瘍から複数のUtx欠損形質細胞腫瘍株 (BRAFV600E:Utxfl/fl;Cgamma1-Cre) を樹立し、Tet-onシステムで野生型Utxを発現させると、腫瘍細胞の増殖が著明に抑制され、ヒトIL-6を発現するNOG免疫不全マウスを用いた移植における造腫瘍活性も顕著に低下することを確認した。さらにIL-6を必要としないC57BL/6への移植の系も確立しつつある。今後はこの細胞を用いた解析を進める予定である。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)