心臓流出路の発生における前方心臓領域細胞と転写因子Tbx1の機能
【研究分野】小児科学
【研究キーワード】
形態形成 / 細胞分化 / 分子生物学 / 発生医学 / 疾患モデル動物 / 先天性心疾患 / 心臓流出路 / 動脈幹 / 前方心臓領域 / Tbx1 / Forkhead / 転写因子 / 遺伝子発現
【研究成果の概要】
近年、前方心臓領域(anterior heart field:AHF)とよばれる咽頭弓中胚葉領域に由来し、心臓流出路の発生に関与する新たな細胞群が発見された。本研究では、AHFに発現する転写因子Tbx1に着目し、AHF由来細胞の心臓流出路形成における分子機構と役割について解析し、以下の成果を得た。1)Tbx1のプロモーター領域のDNA配列と、その配列に結合する転写因子について解析した結果、Tbx1遺伝子の転写開始点から12.8kb上流にあるForkhead型転写因子(Fox)結合配列(Fox site #1)、および6.8kb上流にあるFox結合配列(Fox site #2)の2つのDNA配列が、Tbx1のAHFにおける発現に必要であることが明らかにされた。これら2つのFox結合配列には、Foxa2、Foxc1およびFoxc2転写因子が結合し、量依存性にTbx1の転写を直接制御することが示唆された。2)Fox site #1を含むTbx1エンハンサーに連結したCre組み換え酵素遺伝子を導入したトランスジェニックマウスとR26Rマウスを利用した解析により、Tbx1を発現するAHF由来細胞は、胎生初期には心臓流出路全体と右心室原基を形成し、後期には主に右心室流出路と肺動脈主幹部および肺動脈弁を形成することが示唆された。3)AHFに発現する転写因子Tbx1の発現がそれぞれ正常の60%、50%、20%、0%に低下した胚を得ることができる遺伝子改変マウスの解析により、Tbxl の発現が50%まで低下すると大動脈弓離断症を含む大動脈弓の異常が約30%の胚に認められ、Tbx1の発現が20%まで低下すると、総動脈幹遺残症を含む心臓流出路の異常がほぼ100%の胚に認められた。同時に、ヒト先天性心疾患に認められるような、個体間での細かな重症度の違い、表現型の差異が再現された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)