認知症発症機構における神経変性プロセスの鍵を握る細胞病態の解明
【研究キーワード】
認知症 / 神経変性 / グリア細胞 / ストレス応答
【研究成果の概要】
本研究においては、異常タンパク質蓄積を起点とする認知症の神経変性プロセスについて、様々な細胞が関与する「細胞病態」として捉えなおす。そしてこれらの細胞間相互作用について理解を目指し、1)凝集タンパク質が引き起こす細胞レベルでのストレス応答の理解、2)慢性的なタンパク質蓄積に対する細胞反応異常の解明、3)細胞病態を反映する診断法や介入に向けた新規技術開発、を目指して研究を遂行する。当該年度においては、凝集タンパク質の一つであるアミロイドβ(Aβ)の脳内蓄積を反映するバイオマーカーAPP669-711産生酵素ADAMTS4ノックアウトマウスにおいてAPP669-711産生量低下を確認した。またAβ産生酵素であるγセクレターゼのサブユニットであるAPH-1の活性に影響するアミノ酸残基を見出した。一方、活性中心サブユニットプレセニリンがApoEの分泌に関わっていることを明らかにした。凝集したAβを光酸素化すると、ミクログリアにより分解が亢進することを見出した。cis-9, trans-11-octadecadienoic acidが神経細胞におけるAβ産生や凝集Aβに対する炎症応答性に影響することを明らかにした。加えて、脂質フリッパーゼの異常が細胞内輸送系に影響すること、Aβ前駆体c99のエンドソーム集積の原因となりうることを見出した。疾患特異的なタウ凝集体の形成には、それぞれの疾患特異的なシード形成が重要であることを見出した。パーキンソン病(PD)原因遺伝子LRRK2が細胞内リソソームの局在化に関わっていることを見出した。一方、LRRK2の基質であるRab29に対して近傍ラベリング法によるプロテオミクスを行い、小胞体・ゴルジ輸送に関連する分子を同定し、細胞内輸送関連疾患としてのPD発症機構が示唆された。
【研究代表者】