老化にともなう神経細胞死を運動は抑制できるか?
【研究分野】体育学
【研究キーワード】
神経栄養因子 / 運動 / 脳 / 筋肉 / リン酸化
【研究成果の概要】
一過性の運動が、脳内の神経栄養因子の受容体を活性化するかどうかについて調べた。Wistar系の雄ラット(6週齢)を用い、走運動は5m/分のスピードから開始し,5分毎に5m/分づつ漸増、20m/分になった時点から30分間の運動を行った(合計45分間)。運動終了後、30分,1,2,4,8,12,24時間後にラットの大脳、小脳、脊髄を摘出した。免疫沈降には組織サンプルを160-600μg使用し、TrkB、TrkCに対する抗体はそれぞれ0.5μg,1.0μg用いた。免疫沈降物を電気泳動した後にニトロセルロース膜に転写し、リン酸化チロシンを認識する抗体で神経栄養因子受容体の活性化の有無を調べた。その結果、大脳、小脳において運動1-12時間後までTrkB(BDNFとNT-4の受容体)のリン酸化が認められた。一方脊髄においては、運動後30分からすでにTrkBが活性化しており、運動後24時間が経過してもそのリン酸化が確認された。また大脳においてTrkC(NT-3の受容体)の活性化が、運動4,8,12時間後に確認された。小脳におけるTrkCの活性化は運動1-8時間後に認められたが、運動後の脊髄におけるTrkCのリン酸化はみられなかった。以上のことから、運動は神経栄養因子の受容体を活性化することで、脳内の神経細胞の生存・維持を促す可能性がある。加齢にともなう神経細胞の変性・脱落にも運動の効果が期待できるかもしれない。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)