老化抑制遺伝子Klothoの骨軟骨および脊髄疾患における関与-ヒトKlotho遺伝子cSNPsとアデノウイルスベクターを用いた検討-
【研究分野】整形外科学
【研究キーワード】
Klotho / 遺伝子解析 / 老化 / 骨 / 脊髄 / 神経 / 筋肉 / 網膜 / klotho / 遺伝子導入
【研究成果の概要】
老化および老化関連疾患の背景にある分子メカニズムを解明する目的で、ヒトの老化によく似た多彩な表現型を示すklothoマウスの骨、骨髄、脊髄の検討を行った。klothoマウスでは骨粗鬆化が見られ、その背景には骨芽細胞と破骨細胞の両者の独立した分化障害に基づく骨形成と骨吸収の低下が存在することが明らかとなった。また、骨髄ではBリンパ球の割合が減少しており、Bリンパ球が破骨細胞形成支持細胞および破骨細胞前駆細胞として働いていることが示された。脊髄は小型でニッスル物質が少なく粗面小胞体の障害が疑われた。また、リボゾーム蛋白を作る前段階のリボゾームRNA遺伝子の転写活性が減少していた。更に、ヒトklotho遺伝子と骨軟骨疾患との関連を、ゲノム上のマイクロサテライト多型とSNPsを用いて検討した。マイクロサテライト多型は脊椎靭帯骨化症との相関は認められなかったが、骨粗鬆化および変形性腰椎症の重症度に関与していることが明らかとなった。骨粗鬆化との相関に関する検討では、マイクロサテライト多型の関与は若年群では弱く、閉経による骨量減少という環境因子の影響が少なくなる老年群で強く認められた。一方、変形性関節症に関して相関は弱いながら若年群で見られ、老年群では見られなかった。ヒトklotho遺伝子においてその機能に直接関連のあるcoding regionにおけるSNPsのスクリーニングを日本人と英国在住白人女性において行ったところ3カ所の共通SNPsが見られ、このうちpromoter領域(-395G->A)のSNPが高齢群において骨密度との間に有意な相関を示した。このG->A変異はゲルシフト法によって核蛋白との結合を著明に低下させることが明らかとなった。今後は転写制御を検討することによって老化の分子メカニズムの解明を目指す予定である。
【研究代表者】