遺伝性大腸癌の層別化に基づく発癌分子機構の解明
【研究分野】消化器外科学
【研究キーワード】
家族性大腸腺腫症 / 大腸癌 / 大腸腺腫 / DNAメチル化 / 腺腫 / KRAS / BRAF / 大腸がん / エピジェネティクス / メチル化 / 大腸線腫 / Lynch症候群 / 家族性大腸ポリポーシス
【研究成果の概要】
家族性大腸腺腫症(FAP)は、大腸癌を発症する素因を持つ、多数の結腸直腸腺腫を特徴とする遺伝性疾患である。今回我々はFAP腫瘍のゲノムワイドなDNAメチル化解析を行った。比較対象として、公共のデータベースを参照し、散発性大腸癌、散発性大腸腺腫、および正常粘膜のDNAメチル化データを使用した。FAPと散発性大腸癌/腺腫、正常粘膜の階層クラスタリング分析により、FAP腫瘍は少なくとも異常なメチル化を示さないタイプと、KRAS変異を伴うメチル化中等度タイプの2つの分子サブタイプに分類された。さらに散発性腫瘍よりもDNAメチル化頻度が低いことから、散発性腫瘍とは異なる腫瘍形成経路をたどると考えられた。
【研究の社会的意義】
癌症例を詳細にサブタイプ分類し、各症例へ最も良い治療方針を即座に建立するテーラーメード癌治療概念は、癌を克服するための鍵として世界的に研究されている。我々は大腸癌の中でも高リスク群であり早期対応が望まれるにも関わらず疾患の選定や分子機構の解明に乏しかった家族性大腸腺腫症に対して同様の複合的解析を進め、家族性大腸腺腫症の層別化情報を診断や治療へ応用する。日本大腸癌研究会が近年、「遺伝性大腸癌診療ガイドライン」をあえて作成・周知している背景からも、この研究は遺伝性大腸癌の発癌機構解明に大きな寄与をもたらすだけでなく、これまで散発性大腸癌へ誤診されがちであった遺伝性大腸癌患者の救済にも貢献できる。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2017-04-01 - 2020-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)