内分泌攪乱化学物質のヒトへの汚染とその生殖機能への影響解明
【研究分野】産婦人科学
【研究キーワード】
ビスフェノールA / ダイオキシン / 初期胚 / 顆粒膜細胞 / 低用量作用 / 卵胞液 / 羊水 / アポトーシス
【研究成果の概要】
インフオームドコンセント下に健常非妊女性、妊娠中期女性、妊娠末期女性より採血し、妊娠末期の膀帯血及び羊水を帝王切開時に採取して検体とし、ビスフェノールAの検出を行った。体外受精時に得られる卵胞液も同じく検体とした。妊娠中期(妊娠15-18週)に行った羊水穿刺時に得られた羊水の一部を検体に供した。血清中および卵胞液、羊水中のビスフェノールAは総ての検体から検出され1-2ng/mlであったが、妊娠中期の羊水中の濃度は8.3±8.7ng/mlと高濃度であり、未熟な胎児においてビスフェノールAの濃縮がおこる可能性を示した。またヒト血中ビスフェノールA濃度には性差が存在し、男性の方が女性よりも高値であり、ビスフェノールAの体内動態とアンドロゲンとの関連性を示唆した。卵胞液中のビスフェノールAの卵巣機能に与える影響を検討するモデルとしてマウス卵胞より採取した顆粒膜細胞を培養しビスフェノールAの添加実験をおこなった。ビスフェノールAは、100pMの低濃度で顆粒膜細胞の増殖を抑制し、TUNEL法による解析では顆粒膜細胞にアポトーシスが起こることが明らかになった。さらにG2期からM期への抑制、BaxやBcl2蛋白およびmRNAレベルの変化も観察された。従ってビスフェノールAは環境レベルの濃度で卵胞顆粒膜細胞にアポトーシスを惹起し卵巣機能に影響を与えうることが示された。マウス2細胞期胚を内分泌撹乱物質を添加培養する系をもちいてトリブチルすず、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フタル酸ジブチル、オクタクロロスチレン、ベンゾフェノン、フタル酸ジシクロロヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシルを取り上げた。オクチルフェノール、ノニルフェノール、オクタクロロスチレン、ベンゾフェノン、フタル酸ジシクロロヘキシルは、胚盤胞形成率を対照群に比べ有意に上昇させた。トリブチルすず、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチルヘキシルは胚盤胞形成率の上昇を認めなかった。
【研究代表者】