小児がんにおける遺伝学的高発がん感受性の機序とクローン進化の統合的解析
【研究キーワード】
小児がん / 発がん感受性 / クローン進化 / 治療標的 / バイオマーカー
【研究成果の概要】
先行研究において、申請者らが見出した小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)における悪性度に関連するSPI1融合遺伝子を乱した。今年度は、マウスモデルを用いたシングルセルシーケンス解析を行い、詳細に病的意義を検討した。その結果、SPI1融合遺伝子とNRAS変異を共発現させた造血幹細胞をマウスに移植すると、幼弱なT-ALLを発症することを見出し、SPI1-TCF7陽性例において、βカテニンのアンタゴニストが治療標的になりうることを示した (Quentin et al, Nat. Commun, 2021)。従って、本研究成果はSPI1-TCF7陽性T-ALLにおける新たな克服法の開発につながるものと期待される。
がん幹細胞マーカーと考えられるCD146を標的とした治療の有用性に関して、神経芽腫、横紋筋肉腫の細胞株及び患者由来腫瘍を用いて検討した(Obu et al, Cancer Sci, 2022; Ogata et al, in preparation)。まず、発現解析において神経芽腫、横紋筋肉腫ともに高い発現率を確認した。細胞株においてshRNAによるCD146発現の抑制及び抗ヒトCD146ウサギポリクローナル抗体の投与により神経芽腫、横紋筋肉腫いずれにおいても優れたin vitro細胞増殖抑制とアポトーシス細胞の増加を認めた。shRNAによるCD146の抑制前後の横紋筋肉腫細胞株を用いてRNA seqを行ったところ、CD146の抑制後では、早期アポトーシスに引き続く、細胞周期の抑制が生じていることが増殖抑制の機序であることが判明した。さらにPDXマウスを用いた検討では、神経芽腫及び横紋筋肉腫の顕著なin vivo腫瘍形成抑制効果を確認した。本成果により、CD146は神経芽腫及び横紋筋肉腫に対する治療標的として有用であることが示され、臨床的に有用な知見を得た。
【研究代表者】