軽微な穿通枝虚血による白質障害に関する研究
【研究分野】脳神経外科学
【研究キーワード】
脳虚血 / ラクナ梗塞 / 大脳白質 / モニタリング / ミニブタ / 軸索障害 / 脳梗塞モデル / 白質(内包)障害 / 運動障害 / 虚血後微小環境変化 / 再現性 / 低侵襲性
【研究成果の概要】
本研究ではミニブタ前脈絡動脈の閉塞による白質の脳梗塞モデルを開発し、白質の虚血障害、特にその閾値境界での障害を詳細に検討することを目的とした。
実験動物はminiature pig(体重:19-42kg)を用いた。全身麻酔下に前頭側頭開頭を施行し前脈絡叢動脈を遮断、ラクナ(内包)梗塞を作成した。24hrsモデル:n=7,2daysモデル:n5,1weekモデル:n=7とした。画像評価は梗塞作成24時間後にMRI(DWI,FLAIR)にて評価した。運動機能評価は経時的に行動をスコアリングした[3,6,12,24hr・2.3,4,5,6day・1week(4weeks)]。病理組織学的評価はH-E染色やGFAP、APPなどの各種免疫染色にて評価した。
前脈絡叢動脈閉塞により内包への梗塞が91.4%の動物に作成でき、モデルとしては非常に再現性が高かった。MEPは虚血開始後6.2±1.1分で消失した。しかしながら15分程度までの虚血では虚血再開通後MEPの反応は回復し、可逆性変化であることが判明した。運動機能評価では、閉塞後12-24時間で最大障害となりその後は症状の改善が認められた。12,24hrs、2daysではsham群との間に統計学的有意差(p<0.005)を認めた。
病理学的には梗塞巣は初期には空胞形成と浮腫で始まり、その範囲が拡大してmacrophageが集簇し、瘢痕を形成した。24hrs標本ではischemic core辺縁部には著名な細胞外浮腫、macrophageの集簇、反応性astrocyteが認められ、時間経過とともに炎症範囲の進展・拡大を認めた。亜急性期から慢性期にかけての軸索障害は虚血による直接障害部位から離れた遠位部においても同側の大脳白質で広範囲で散在性に認められた。神経軸索の障害を反映するAPP免疫染色での染色性の低下もこれに比例して拡大した。一方GFAPにより染色される反応性のastrocyteは24時間目から1週間後にかけて梗塞の辺縁部に集簇していた。
【研究代表者】