動物ミトコンドリアの特殊性を活用した遺伝情報翻訳システムの基盤原理の解明
【研究分野】構造生物化学
【研究キーワード】
ミトコンドリア / tRNA / 翻訳装置 / 最小必須構造 / リボソーム / rRNA / EF-G / L7 / L12蛋白質 / アミノアシルtRNA合成酵素 / X線結晶解析 / 23SrRNA / 16rRNA / 保存配列
【研究成果の概要】
本研究の目標は、翻訳過程における未解決の根本問題を、動物ミトコンドリア(mt)翻訳システムの特殊性を活用して解明することである。それは良く研究されてきた大腸菌の翻訳系をベースにして、それに特殊な動物ミトコンドリアの翻訳装置を組み合わせて行う。
(1)tRNAの最小必須構造:現存する生物の中で最短のtRNAである、線虫mtのセリンtRNA(tRNA^<Ser>_<UCU>:54残基からなり、Dアームはなく、Tアームは3塩基対と4塩基のループからなる)の高次構造をNMRによって検討し、クローバ葉型の2次構造から予測される塩基対は殆ど水溶液中でも存在すること、短縮されたDループとエクストラループからなる連結領域は柔軟な構造をとることが判った。この自由度は、3'末端とアンチコドン間の相対距離を通常のtRNAと同様に保つための調整に不可欠のものである。(2)リボソームの最小必須構造:mtリボソームは大腸菌リボソームに比べ、リボソームRNA(rRNA)が約半減している代わりに、蛋白質が倍増している。rRNAの機能部位は中央部に厳密に保存され、周辺部で欠けたrRNA領域はすべて蛋白質で補填されており、これらRNAの周辺領域に位置するステム・ループ領域がかなり削除可能であることが判明した。
(3)翻訳系のエネルギー源であるGTPの加水分解反応のtriggerは何か:EF-GのGTPase活性がリボソーム蛋白質L7/L12で活性化されることからGTPの加水分解反応のtriggerはL7/L12蛋白質であることが示唆されていたが、我々は、大腸菌EF-Gはmt・リボソームでは機能しないが、EF-GのGTPase活性化因子であるL7/L12蛋白質のみを大腸菌由来のものに置換したmt・リボソームでは機能することを見出し、GTPの加水分解反応のtriggerがL7/L12蛋白質中に存在することを突き止めた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
鈴木 勉 | 東京大学 | 大学院・新領域創成科学研究科 | 講師 | (Kakenデータベース) |
大槻 高史 | 岡山大学 | 工学部 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】48,880千円 (直接経費: 37,600千円、間接経費: 11,280千円)