オルガネラを標的とするナノヒーターの創製とガン温熱療法の深化
【研究キーワード】
温熱療法 / 磁性ナノ粒子 / 薬物送達システム / ミトコンドリア / がん治療 / ドラッグデリバリーシステム / がん温熱療法
【研究成果の概要】
がん温熱療法は腫瘍組織を43℃以上に加温し細胞死を誘導するがん治療法であり、交流磁場照射による磁性ナノ粒子の発熱を利用したがん温熱療法が盛んに研究されている。しかし、磁性ナノ粒子を直接注射できる固形腫瘍は少なく、血中投与で腫瘍全体を43℃以上に加温するのは難しい。そのため、少ない腫瘍送達量で効率的に細胞死を誘導する磁性ナノ粒子の開発が求められている。細胞内小器官の1つであるミトコンドリアは、熱の刺激に敏感で容易に細胞死を誘導する。したがって、磁性ナノ粒子へのミトコンドリア指向性付与により、高い温熱治療効果が見込まれる。本研究では、高い親水性と細胞親和性を有するMPCポリマーとミトコンドリア指向性が知られているTPPを利用することで、細胞親和性とミトコンドリア指向性を兼ね備えた機能性磁性ナノ粒子を創製し、その温熱治療効果を検討した。FT-IR測定と熱重量測定により、MESユニット中のカルボキシル基を介して、粒子表面にMPCポリマーが結合したことを確認した。ポリマー被覆マグネタイトナノ粒子は、水溶液中で高い分散性を示し、交流磁場照射下で良い発熱特性を有していた。CT26細胞にマグネタイトナノ粒子を添加し、24時間培養したのちに細胞生存率を測定したところ、細胞傷害性を示さなかった。次いで、ポリマー被覆マグネタイトを添加した細胞に交流磁場を照射し、加温した後の細胞生存率を測定したところ、TPPユニットを持たない磁性ナノ粒子を添加した系と比較して、TPPユニットを有する磁性ナノ粒子を添加した系において有意に細胞生存率の低下がみられた。この結果は、TPPユニットの存在によりマグネタイトがミトコンドリアに蓄積し発熱することで、より高い温熱治療効果が実現したことを示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
岡部 弘基 | 東京大学 | 大学院薬学系研究科(薬学部) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)