アディポネクチンの2型糖尿病・高脂血症・動脈硬化症における病態生理学的意義の解明
【研究分野】代謝学
【研究キーワード】
アディポネクチン受容体 / 肥満 / 糖尿病 / アディポネクチン抵抗性 / 脂肪酸燃焼 / 糖取り込み / 核内受容体型転写因子 / AMPキナーゼ / アディポネクチン / 脂質代謝異常 / インスリン抵抗性 / PPARγ / 動脈硬化 / レプチン
【研究成果の概要】
肥満ではアデイポネクチンが低下し、糖尿病・代謝症候群の原因となっており、その補充がAMPキナーゼ(Nat.Med.8:1288,2002)やPPARαを活性化し、これらの効果的な治療手段となることを示した(Nat.Med.7:941,2001)。また、アディポネクチンの欠損により炎症性の内膜肥厚が増悪し(J.Biol.Chem.277:25863,2002)、アデイポネクチンの発現がapoE欠損マウスの動脈硬化巣の形成を抑制することを示した(J.Biol.Chem.278:2461,2003)。
脂肪細胞由来の抗糖尿病・抗動脈硬化ホルモン、アデイポネクチンの作用メカニズムと病態生理学的意義を明らかにするためにはアデイポネクチン受容体の同定が最重要課題である。私共は、特異的結合を指標にした発現クローニング法により、骨格筋に多く発現するアデイポネクチン受容体(AdipoR)1と肝臓に多く発現するAdipoR2の同定に世界で初めて成功した(Nature 423:762,2003)。興味深いことにAdipoR1と2は7回膜貫通型の構造を有すると考えられたが、既知のG蛋白質共役型受容体ファミリーとは構造的・機能的に異なったファミリーに属するものと考えられた。AdipoR1もしくはR2の培養細胞への発現、あるいは逆にsiRNAを用いた内因性の発現レベルを低下させる実験により、AdipoR1とR2はそれぞれ、骨格筋に強く作用するC末側のglobular領域のアデイポネクチン及び肝臓に強く作用する全長アデイポネクチンの受容体であり、AMPK、p38MAPK及びPPARαの活性化を介し、脂肪酸燃焼や糖取込み促進作用を伝達していることを示した。更にob/obマウスの骨格筋・脂肪組織においては、AdipoR1・R2の発現量が低下し、それと共にアディポネクチンの膜分画への結合、AMPキナーゼ活性化が低下するのが認められ、アディポネクチン抵抗性が存在することが示唆された(J.Biol.Chem.投稿中)。
同定したアデイポネクチン受容体に対する作動薬やアディポネクチン抵抗性改善薬の開発は、糖尿病・高脂血症などのリスクファクターを低減させる間接作用と血管壁に対する直接作用の両方を有する代謝症候群の根本的な治療法開発の道を切り開くものと強く期待される。
【研究代表者】