母児概日リズム同期と次世代疾患感受性の多層多元的代謝リズムパネルからの理解
【研究キーワード】
概日リズム / 母児連関 / 液性因子 / 内分泌代謝 / 糖尿病 / 慢性腎臓病
【研究成果の概要】
概日時計は、変動する環境に対し予測的に生体活動を適応させる生体恒常性維持機構であり、昼夜の明暗リズムを基盤に、摂食と空腹、睡眠と覚醒などによって修飾され、概日リズムを作り出している。時差症候群やシフトワークにより生じる概日リズム障害は、肥満症や糖尿病、心血管病の危険因子であることが疫学的に広く知られているが、その機序は必ずしも明らかではない。妊娠中の母体においても概日リズムの維持は、安定した周産期と児の成育に重要であると考えられ、実際にシフトワーカーの妊婦では低出生体重児が多いことが報告されている。この低出生体重は成人後の疾病のリスクであり、子宮内の児の発達により、児の将来の様々な疾患感受性が決定されることが示唆されている。しかし、母体の概日リズムが、胎児の発達および児の成育と将来の疾患感受性に与える詳細な影響は明らかではない。そこで本研究では、妊娠母体の概日リズム障害が、胎盤を通過する液性因子のリズム変調を介して、臓器形成、および、その後の疾患感受性を決定すると仮説を立て、液性因子を介した母児間のリズム獲得不全が仔の疾病発症に与える影響を、「代謝リズムパネル」を駆使して、多層多元的に解明することを目的としている。
C57BL/6マウスを妊娠期間中のみ、12時間明暗周期の環境下または、5日に1回、8時間位相を早めるサイクル(Continuous Phase Shift: CPS)で飼育した。両群の妊娠期間や出産個体数に有意差は認められなかったが、出生直後の児の体重は、CPS群で有意に低下していた。その後、オスの児を生後4週から12週にわたり、12時間明暗周期の環境下で低脂肪食負荷を行ったところ、対称群とCPS群の間に体重、脂肪重量、肝臓重量、糖負荷試験による耐糖能に有意差は認められなかった。今後、高脂肪食負荷を行い、CPSによる代謝の長期的影響を検討する予定である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
入江 潤一郎 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
宮下 和季 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
木内 謙一郎 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2021-07-09 - 2026-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)