血液幹細胞ならびにリンパ球を標的細胞とした遺伝子治療のモデルシステムの開発
【研究分野】内科学一般
【研究キーワード】
体細胞遺伝子治療 / 造血幹細胞 / サイトカイン / 糖尿病 / 骨髄移植 / CD34 / 多能性 / 自己複製能 / c-kit / 免疫寛容 / clonal deletion / clonal anergy / 骨髄キメラ / 遺伝子治療 / 血液幹細胞 / インシュリン / アガロース
【研究成果の概要】
体遺伝子治療の動物モデルシステムを確立し、つぎに理想的な標的細胞として考えられてきた造血幹細胞に焦点を絞り造血幹細胞の純化法の確立、in vitroでの増殖、マイクロインジェクション法やレトロウイルスを用いた遺伝子導入法の開発を目標に3年間研究をすすめた。その結果、まずヒトインシュリン遺伝子を導入した繊維芽細胞による糖尿病モデルマウスの治療に成功し、体細胞遺伝子治療のモデルシステムを確立することができた。このシステムではヒトインシュリン遺伝子とともに細胞表面抗原をコードするCD8の遺伝子を同時に発現させ、移植した繊維芽細胞の数をCD8に対する抗体で制御することによりインシュリンの産生量をある程度調節することも可能であることが示された。さらに移植した遺伝子導入繊維芽細胞の増殖をコントロールすることを目的としてアガロースカプセル内に細胞を包み込んでから移植する方法も開発した。次に、未分化な血液幹細胞はG0期にある細胞が多く、レトロウイルスによる効率の良い遺伝子導入が難しい。そこで純化した血液幹細胞を種々のサイトカインの存在下で培養し、その間にレトロウイルスを感染させることによって導入効率を挙げることができるかどうかを検討した。未分化な血液幹細胞に対する導入効率を調べる方法として、ネオマイシン耐性遺伝子を導入遺伝子として用い、レトロウイルスと共培養した細胞をネオマイシンを含んだメチルセルロース培地で培養してHPP-CFUアッセイを行った。種々のサイトカインの組み合せで実験を繰り返した結果、SCF、IL-1、IL-6、LIFの存在下で血液幹細胞をin vitroで短期間培養することによりレトロウイルス取り込みの確率を上げることが可能であることを示すことができた。また体細胞遺伝子治療の標的細胞の純化に関しても研究を進め、マウス骨髄中単核球の0.008%を占める、c-Kit陽性Sca-1陽性分化抗原陰性CD34陰性の細胞がほぼ造血幹細胞そのものであることを見つけ、わずか1個の造血幹細胞でも骨髄移植が可能であることを実験的に証明した。
【研究代表者】