一次繊毛を介した新規腎尿細管恒常性維持機構とそれに基づく腎線維化機序の解明
【研究キーワード】
尿細管炎症・線維化 / オルガネラストレス / オルガネラコンタクトサイト / エネルギー代謝 / 慢性腎臓病 / 尿細管細胞一次繊毛 / 一次繊毛構成蛋白 / ミトコンドリア / オルガネラ間相互作用 / 脂質代謝 / 尿細管炎症 / 尿細管線維化 / 尿細管線炎症・維化 / 代謝
【研究成果の概要】
これまでに、尿細管細胞一次繊毛 (primary cilium) の遺伝背景が関与する尿細管障害(嚢胞形成、炎症、線維化)の分子機序や、一次繊毛を介した細胞内シグナル伝達経路などが研究されてきたが、一次繊毛が小胞体やミトコンドリアなどの他のオルガネラの機能不全 (オルガネラストレス)、あるいはオルガネラ間相互作用(オルガ ネラクロストーク、オルガネラコンタクト)に及ぼす影響を解明した報告は乏しい。そこで本研究は一次繊毛-ミトコンドリア間相互作用の破綻が尿細管嚢胞形成や脂質代謝異常といった尿細管障害表現型との関連性を解明し、「一次繊毛のオルガネラとしての機能解明、それに基づく革新的な尿細管恒常性維持機構とその破綻による尿細管障害機序の解明」を目標としている。
我々はこれまでに、尿細管障害モデルマウス(シスプラチン誘導急性腎不全)において、尿細管障害は一次繊毛の短縮や消失を伴うことを確認し、一次繊毛の形態学的、機能的変化が尿細管上皮細胞の恒常性に何らかの関連性を有する知見を得てきた。
こうした一次繊毛の短縮や消失といった現象の病態生理学的意義を解明することを目的に、尿細管障害時の一次繊毛構成分子群の発現変動を網羅的に解析したところ、1)一次繊毛のアセンブリと維持に不可欠で繊毛内輸送を媒介する因子であるIFT88 (Intraflagellar Transport 88)の発現が尿細管障害時(シスプラチンによる障害誘導時)に著明に低下し、2)IFT88 siRNAによるIFT88 knock downは尿細管細胞の一次繊毛の短縮を引き起こす事を明らかにした。さらに興味深いことに、IFT88欠損尿細管細胞の表現型として、ミトコンドリア機能低下(ミトコンドリアストレス、特に脂質代謝の低下)が見いだされた。
【研究代表者】