Bassoon proteinopathyの病態解析研究
【研究キーワード】
タウオパチー / 多系統萎縮症 / 多発性硬化症 / Bassoon / バイオマーカー / 神経変性 / 認知症 / パーキンソニズム / モデル動物
【研究成果の概要】
われわれは先行研究において、一部のタウオパチー発症に神経終末アクティブゾーンに存在するbassoon蛋白を翻訳するbassoon(BSN)遺伝子の変化を見出した。そのタウオパチーは3リピート(3R)と4リピート(4R)のタウ蛋白質が蓄積する新しい病態であることも示した。さらに、今までPSPと臨床診断していた患者を対象に遺伝子解析を実施したところ、その約10%にBSN遺伝子変化を同定した。このメカニズムとして分子生物学的手法を用いて、BSN遺伝子変異がタウタンパク質を不溶性分画に移行させる病原性があることを解明した。その結果、われわれの論文を引用し、Bassoon proteinopathyという疾患概念が提唱され、BSNタンパク質やBSN遺伝子と多発性硬化症、ハンチントン病、若年性パーキンソン病などの重要な神経疾患との関連が近年相次いで報告されている(Montenegro-Venegas C, et al. Autophagy 2020, Huang TT, et al. Acta Neuropathol Commun 2020, Hoffmann-Conaway S et al. Elife 2020)。当教室では現在このBSN遺伝子変化のPSPを始めとする神経難病への関与についてさらに検討を進めている。具体的には今回の研究では、①モデル動物と細胞株においてBSN遺伝子変異がタウオパチーを惹起する病態機序と同変異が治療標的となり得る可能性、②過去の研究報告からBSNが病態に関与している可能性がある認知症関連疾患、パーキンソン症候群、多系統萎縮症、多発性硬化症などの多様な神経疾患におけるBSN遺伝子変異関与の可能性、③血漿や髄液検体を用いてBSNタンパク質を測定し、BSNタンパク質量が診断および重症度バイオマーカーになり得る可能性、の3課題を中心に研究を遂行している。
【研究代表者】