神経個性を表象する神経活動パターンと遺伝子発現制御
【研究キーワード】
神経回路 / 嗅覚 / 神経活動 / 遺伝子発現 / 発達 / 神経回路形成 / カルシウムシグナル
【研究成果の概要】
マウスの嗅覚系では、匂いを受容する嗅覚受容体が神経回路形成時にも重要な役割を果たすことが知られている。嗅覚神経細胞で発現するたった一種類の嗅覚受容体分子は、神経活動を介して様々な軸索選別分子の発現を制御することを通じて、軸索と呼ばれる神経突起を適切な箇所へとガイドする。本年度は、細胞ごとに異なる神経活動の時間変化パターンがどのように異なる軸索選別分子の発現パターンへと変換されるのかを明らかにするために、嗅覚神経細胞で発現するカルシウム依存性転写調節因子の網羅的なノックアウト実験を実施して、軸索選別分子群の発現へ与える影響を調べた。
・嗅神経細胞では4種類存在するカルモジュリンキナーゼIIのサブタイプのうち4種類が発現している。単独のノックアウトマウスでは、軸索選別分子の発現に影響はなかったが、3種類を同時にノックアウトした場合のみ軸索選別分子のうちプロトカドヘリン10(PCDH10)の発現が大幅に減少した。
・カルシニューリンのカルシウム結合サブユニットであるCNB1のノックアウトマウスにおて、Kirrel2という軸索選別分子の発現が大幅に減少し、PCDH10の発現が上昇することを見出した。
・カルモジュリンキナーゼⅣ、NK-κBの転写活性化ドメインであるRelAのノックアウトでは軸索選別分子への発現変化は観察されなかった。
先行研究から、Kirrel2とPCDH10は異なる神経活動パターンにより発現が誘導されることがわかっている。以上の結果から、異なる神経活動パターンは、異なるカルシウム転写調節因子を活性化することにより異なる軸索選別分子の発現を制御していると示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】46,020千円 (直接経費: 35,400千円、間接経費: 10,620千円)