分子種の異なるヘムを有する呼吸鎖末端酸化酵素の機能部位の解析
【研究分野】機能生物化学
【研究キーワード】
エネルギー共役 / 呼吸鎖電子伝達系 / Halobacterium halobium / 大腸菌 / 末端酸化酵素 / キメラ蛋白 / 酸化還元部位 / 複核中心
【研究成果の概要】
古細菌Halobacterium halobiumに存在する末端酸化酵素(aa_3型)は、大腸菌のユビキノール酸化酵素(bo型)と共に、ヘム・銅末端酸化酵素のスーパー・ファミリーに属する。しかしながら、両者の間には、構成サブユニットの遺伝子配列や生理的な呼吸基質、第二の活性中心における銅原子の有無、結合するヘムの種類といった違いがあり、反応機構上の相違を反映している可能性がある。また、別の分子種のヘムを活性中心に持つ末端酸化酵素も本研究室で精製されている。
そこで、本研究では、呼吸鎖電子伝達系の末端酸化酵素の機能部位の構造と機能の相関性を知ることを目的として、PCR法によってまず未同定のタイプの末端酸化酵素遺伝子のクローニングを行った。
好アルカリ菌のあるものはaco型の、磁性細菌Magnetospirillumではcbb型の末端酸化酵素が当研究室で精製されている。これら新しいタイプの末端酸化酵素の遺伝子を単離した。前者については、さらにその転写単位を構成する構造遺伝子群が遺伝子ライブラリーより得られており、その構造解析を行った結果、活性中心近傍のアミノ酸配列からはヘムOの存在を規定する分子構造は特定されない一方で、3つのサブユニットの構造遺伝子の5'側にヘムO合成酵素が、またそのしばらく上流にヘムA合成酵素(HAS)がコードされていた。HASの生化学的研究は、本酵素の金属中心に配位するヘムの分子種の選択性を決定する要因を解明する手がかりを提供するものと期待される。他方、サブユニットIIに融合したチトクロム c 部分の塩基性アミノ酸残基の置換はアルカリ適応への寄与を、膜表在領域の残基のBacillus PS3酵素との酷似は蛋白の耐熱性を示唆するものである。今後は大腸菌の発現系を用いて、変異導入やキメラ作製による触媒活性の変化を調べ本酵素の作用機構を明らかにする予定である。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1994
【配分額】800千円 (直接経費: 800千円)