神経堤細胞に由来する血管平滑筋前駆細胞の単離同定と分化系譜の確立
【研究分野】循環器内科学
【研究キーワード】
神経堤細胞 / 幹細胞 / 鰓弓 / 血管平滑筋 / エンドセリン / 転写因子 / 分化制御 / 核移植 / 胚発生
【研究成果の概要】
i)平滑筋前駆細胞の同定と分化における転写因子の役割:血管平滑筋分化に必須であるdHAND遺伝子の導入は、むしろ最終分化を抑制し、この転写因子が分化の中間段階の維持に必要であると考えられたが、その下流遺伝子を同定するため、DNAマイクロアレイを用いてdHANDを強制発現させたEC細胞P19で誘導される遺伝子群を調べた。そのうち、dHAND発現がダウンレギュレートされているET-1遺伝子欠損マウスで発現の抑制されている遺伝子としてカルパイン6遺伝子が同定された。この分子はカルパインファミリーの中でもプロテアーゼ活性を持たないもので機能は不明であるが、強制発現及びRNAiを用いた実験から、この分子が細胞骨格の構築を介して細胞の形態に関与する機能を持つことを明らかにした。現在神経堤細胞や血管平滑筋細胞における役割について検討中である。その他dHANDの下流遺伝子としてPDGF受容体などがマイクロアレイによって同定され、平滑筋への分化過程でも同様の関係があるかどうか解析を進めている。
ii)神経堤細胞からの分化過程における核の可塑性に関する研究:神経堤細胞から平滑筋様細胞への分化は培養下で再現可能であるが、この過程で核の可塑性と分化の関係を調べるため、神経堤細胞をドナーとするマウス除核未受精卵への核移植により、初期発生の進行とクローン個体の形成を評価した。これにより、培養神経堤細胞では未分化状態及び平滑筋型アクチンを発現する平滑筋様細胞に分化の進んだ状態ともに、ES細胞に匹敵する初期発生の進行とクローン個体形成能を認めた。これより、神経堤細胞から平滑筋細胞へと分化が進む過程で、その初期段階では未分化細胞同様の核の可塑性をもつことが示され、その分化制御機構における意義が今後の課題になると考えられた。
【研究代表者】