遺伝子修飾による抗腫瘍T細胞の長期生存化と養子免疫療法への応用
【研究キーワード】
養子免疫療法 / 抗腫瘍T細胞 / キメラ抗原受容体 / 遺伝子変異 / T細胞性リンパ腫 / エピジェネティクス / 転写因子 / メモリーT細胞 / CRISPR/Cas9
【研究成果の概要】
本研究では、抗腫瘍T細胞の長期生存能を高めるために、T細胞性リンパ腫細胞で変異が報告されている遺伝子群に着目して抗腫瘍T細胞に遺伝子導入を行い、その機能解析、具体的には細胞増殖能、サイトカイン分泌、細胞傷害活性などの評価を通じて、持続的な抗腫瘍効果の改善に寄与する遺伝子修飾標的を同定することを目標としている。
本年度は、これまでの探索から同定していたがん抑制遺伝子PRDM1のノックアウトによるキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞、及び腫瘍浸潤T細胞 (TIL)の機能改善について、さらに解析を進めた。PRDM1をCRISPR/Cas9技術を用いて遺伝子レベルでノックアウトしたCAR-T細胞は、コントロールと比較して生体内における長期生存能に優れ、その結果として有意に治療効果を改善させることを、異なる標的抗原を標的とした複数のマウス腫瘍モデルにおいて示した。特に現在のところ有効な治療効果が得られていない固形がんに対するCAR-T細胞においても、同様に長期生存能の獲得が見られることを示した。その際に、生体内に残存するPRDM1ノックアウトCAR-T細胞が未分化メモリー形質を有意に維持していることも確認した。またTILについては、主に肺癌、婦人科腫瘍検体から採取した検体について、PRDM1ノックアウトの効果を検証した。いずれの検体でも末梢血T細胞と比較して終末分化がより進行していたが、PRDM1ノックアウトにより、一部のメモリー形質の再獲得が起こり、サイトカイン分泌能が改善することを確認した。これらの研究成果は学術論文として受理された (Yoshikawa et al. Blood 2022)。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)