肺がん組織における空間的遺伝子発現および局所変異解析手法の構築
【研究キーワード】
空間トランスクリプトーム解析 / ロングリード技術 / がん / 空間オミクス解析 / ゲノム / トランスクリプトーム
【研究成果の概要】
本研究は、空間トランスクリプトーム解析技術とロングリード技術を駆使して、がん組織空間上に不均一に生じているゲノム変異およびトランスクリプトーム異常を解析し、組織局所におけるがんの進展を分子レベルで明らかにする手法を開発・実践するものである。本年度は、肺腺がん凍結手術検体より取得した空間トランスクリプトームの全長cDNA増幅産物を用いて、ロングリード解析を実施した。位置バーコードを含む全長cDNAについてナノポア型長鎖シークエンサーPromethIONによりシークエンス解析を行い、位置バーコードが抽出できたロングリードから点変異を検出することで、空間トランスクリプトームデータ上の各スポットにおける変異ステータスを解析した。全トランスクリプトームをシークエンスすると、ハウスキーピング遺伝子等の高発現遺伝子が多く解読されてしまい、標的としていたドライバー変異やがん関連遺伝子の変異が検出できなかった。そのため、ターゲットキャプチャー法により、がん関連遺伝子の全長cDNAのみを濃縮し、シークエンス解析を行った。その結果、解析したすべての症例において、少なくとも1つ以上の複数のスポットについて、位置バーコードとcDNA上のドライバー変異を紐づけることができた。一方で、得られたシークエンスリードには、位置バーコードを持たないものや標的変異のある領域まで届いていないものが数多く含まれていた。逆転写および全長cDNAのPCR増幅の実験条件については、さらなる検討が必要であると考えている。また、得られたロングリードから位置バーコードと変異を検出する情報解析手法についても、開発が必要であり、いくつかの既存ツールを組み合わせてパイプラインの構築を始めている。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)