二重特異性(dual-TCR)T細胞の意義の解明
【研究キーワード】
T細胞 / 抗原受容体 / TCR / レポーターマウス / ゲノム編集
【研究成果の概要】
「1つのリンパ球(T細胞、B細胞)は1種類の抗原受容体を発現する。」この原則は現代免疫学における根幹原理のひとつである。しかし、TCRa遺伝子の対立遺伝子排除の不完全性により、1つのT細胞の表面に2種類のTCRが同時に発現することがある。このような2種類のTCRをもつ「Dual-TCR T細胞」は、2種類の抗原への交叉反応を示すため、免疫学の原則から逸脱する。しかし生体内のDual-TCR T細胞の検出は容易ではなく、Dual-TCR T細胞の意義については不明な点が多い。本研究では、Dual-TCR T細胞を検出・単離可能なレポーターマウスを作製し、Dual-TCR T細胞の生理的意義を解明することを目的とする。
① TCRa遺伝子の定常領域に、2Aペプチドによってレポーター遺伝子(ZsGreenまたはhCD2)を連結し、機能的なTCRaの発現を反映するレポーターマウスを作製した。これらのレポーター系統どうしを交配し、ZsGreen+ hCD2+ Dual-TCR T細胞を検出することに成功した。さらに、2種類のTCRaを表面に発現するT細胞を検出するため、このレポーターマウスマウスをもとにして、定常領域の細胞外部位にエピトープタグ(ALFAまたはMyc)を挿入したマウスを作製した。
② ①で作製したレポーターマウスおよびエピトープタグマウスを用いて、T細胞をフローサイトメーターで解析した。末梢T細胞のおよそ20%が両アレルでin-frameの遺伝子再編成を受けたTCRaタンパク質を発現し、そのうちの約30%は2種類のTCRaを細胞表面に出していることが明らかになった。すなわち、Dual-TCR T細胞を検出する世界初のモデル動物の作製に成功した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)