認知症の医療社会学的研究――介護者たちの規範はいかに変化したか?
【研究分野】社会学
【研究キーワード】
医療社会学 / 認知症 / 家族介護
【研究成果の概要】
本研究は、過去の認知症ケアのあり方が、どのように現在の「新しい認知症ケア」を形成してきたのか、その歴史を分析することを目的とする。日本の認知症介護は、特に 2000 年代以降、いわゆる「新しい認知症ケア」の理念下にあるとされる。「新しい認知症ケア」とは、認知症患者本人に残された「意思」を徹底的に尊重し、「その人らしさ」を守ることに価値を見出す介護をさす。しかし「新しい認知症ケア」の理念が、いったいどのように日本で普及していったのかは、これまで十分に検討されていなかった。
そこで本研究は、介護家族の語りや支援団体が残した文書資料を収集し、認知症ケアの理念がどのように転換したのか、詳細に検討した。
【研究の社会的意義】
本研究の意義を、二つの点から説明する。第一に、介護家族の経験と、彼らを支えた先進的団体の記録を体系的に収集・分析した点。本研究は、1970年代から90年代を、日本における認知症ケアの理念の転換期と位置づけ、その間の介護家族の経験を新たに聞き取り、散逸していた資料を収集した。第二に、それらのデータから、認知症ケアの理念の転換を理解する上で、重要な論点を発見した点。具体的には、「患者の尊重のあり方の変化」「看取りケアという争点の浮上」「介護者たちは患者をいかなる存在とみなしているか」という三つが挙げられる。
今回の成果は、認知症ケアの理念がさらなる転換を迎える現在、実践的な意義も持つものと考える。
【研究代表者】
【研究種目】研究活動スタート支援
【研究期間】2017-08-25 - 2019-03-31
【配分額】2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)