環境計画の社会的受容と市民参加手続きの公正さに関する日欧比較調査
【研究分野】社会心理学
【研究キーワード】
市民参加 / 手続き的公正 / 権威への信頼 / 環境計画 / 国際比較 / 意見表明の機会 / 意見の類似性 / 社会的受容 / 環境政策 / 信頼
【研究成果の概要】
3年間の主な研究成果は以下の3つである。
EUの環境計画への市民参加事例から、参加型会議の参加者と非参加者の比較が可能なドイツ・バイエルン州と、市民参加による計画策定が重複して実施され一般市民の認知度が高いドイツ・レンゲリッヒの事例を選び、社会調査を実施した。その結果、(1)計画策定の参加手続きの公正さ評価は、計画の効果評価とともに、計画の社会的受容の主要な規定因であること、(2)参加手続きの公正さは権威(行政)への信頼を醸成すること、(3)会議参加者は、参加を通じて計画の手続き評価を高めるとともに、参加によって自己効力感などのエンパワーメントを獲得することを明らかにした。
EUとの国際比較のため、日本における環境計画への市民参加の事例として、桑名市における河川改修事業での住民参加の事例と、多治見市におけるごみ減量施策導入での市民参加の事例を取り上げて、社会調査を実施した。その結果(1)ドイツと同様に、参加手続きの公正さ評価が、計画の社会的受容の主要な規定因であること、(2)参加手続きの公正さ評価が行政の信頼を高めること、(3)計画策定以前の権威への信頼が低いほど、手続き的公正さ評価が計画の社会的受容に及ぼす効果が高いという、信頼の調整効果を明らかにした。
環境計画の参加手続きが手続き的公正評価と社会的受容に及ぼす効果を分析するための仮想シナリオ実験を、オランダと日本で実施した結果、(1)参加者の意見表明の機会の有無は、参加手続きの公正さ評価を通じて、権威の信頼と計画の社会的受容に影響を及ぼすこと、(2)一般市民とその代表である会議参加者との意見の類似性の有無は、会議参加者への信頼を通じて、計画の社会的受容に影響を及ぼすこと、(3)オランダと日本では、計画の社会的受容の主要な規定因が、各々、意見の類似性と意見表明の機会と異なることが明らかになった。
【研究代表者】