微小循環機能恒常性を考慮した細胞型人工酸素運搬体の設計と開発
【研究分野】麻酔・蘇生学
【研究キーワード】
heme oxygenase / Oxygen carrier / Hemoglobin / microcirculation / nitric oxide / bilirubin / carbon monoxide / Kupffer cells / NO / CO / 微小循環 / ヘモグロビン / バイオイメージング / ビリルビン / hme oxygenase / リポソーム / 一酸化炭素 / 酸素 / ヘムオキシゲナーゼ / シトクロームP450 / 肝臓
【研究成果の概要】
肝臓・網内系は修飾ヘモグロビン(Hb)の主要な代謝コンパートメントである。ショック病態で救急救命に使用できる酸素運搬体はこれらの病態においても肝臓の恒常性を維持しつつ循環動態を改善できるスペックを持つ必要がある。本研究ではショック病態の肝臓ではヘムの分解代謝の動態が劇的に変動し、通常では考えられないような速度で肝臓に取り込まれたヘムがbilirubinに変換されることを明らかにした。これはストレス応答によりヘム分解酵素であるheme oxygenase (HO)-1が肝臓実質とKupffer cellで誘導されるためである。このような状況で肝臓に大量のHbが負荷されると肝臓の血流と胆汁を維持しているCOが捕捉、消去されてしまうため、血流低下や胆汁低下を来たすことが明らかになった。ヘモグロビン(Hb)を径250ミクロン大のliposomeに封入、表面をpolyethylene glycolで修飾して、血小板活性化能のない新規脂質で安定化させた試料を投与すると、そのような急速なヘムの分解や分解系酵素の誘導が抑制され、肝臓の血流や胆汁分泌が維持された。またビリルビンの表面修飾によりNOによるHbのメト化も部分的に抑制された。本研究ではHb-based oxygen carrierを体内投与した際に生じうる血管内皮細胞の機能変動をin vivoで評価する系としてNOのbioimaging技術を確立し、腸間膜における血管内皮細胞由来のNOのリソースについて重要な知見を得た。これまでNOのリソースは血管内皮と神経系と考えられてきたが、我々の得た知見は赤血球から供給されるリソースの存在を示唆するものであった。このような知見からHbを修飾した酸素運搬体ではこのような血流代償作用が期待できないことが示唆され、リポソーム型の場合であっても、血管内空間でリサイクルされるNOにどの程度の影響を与えるのかをさらに詳細に解析していく必要があると考えられた。
【研究代表者】