発生期にリーリンにより誘導される神経細胞凝集は大脳新皮質層構造の起点となるか?
【研究キーワード】
大脳新皮質 / 神経細胞 / 細胞凝集 / リーリン / N-カドヘリン / 脂質ラフト / Dab1 / Dbnl / 層構造 / 発生
【研究成果の概要】
本研究は、発生期哺乳類大脳新皮質において脳室面付近で誕生した興奮性神経細胞が脳表面下の辺縁帯直下まで移動した直後に、神経細胞同士が互いに集積する現象の分子機構を明らかにすることを目的に行った。2020年度までの研究により、辺縁帯に存在するカハール・レチウス細胞から分泌されるリーリンが細胞凝集形成機能を持つこと、この凝集形成にN-カドヘリン、Nck2、Dbnlが関与していることを見出した。さらに、N-カドヘリン、リーリンシグナルのハブタンパク質として機能するDab1分子、Dab1の下流分子であるphosphatidylinositol-3 kinase(PI3K)等が、リーリン刺激により脂質ラフトに移行することを生化学的解析・プロテオーム解析等により明らかにした。2021年度は、まず、PI3Kがリーリンによって誘導される細胞凝集塊形成に関与するか検討した。子宮内マウス胎仔脳電気穿孔法により、リーリン発現プラスミドおよび機能喪失型PI3K発現プラスミドを発生期胎仔大脳新皮質に異所性に共発現させると、形成される神経細胞凝集塊が異形態になった。このことは、リーリンによる神経細胞凝集形成にPI3Kが関与することを示している。さらに、PI3Kの下流候補分子として、Girdin、Arl4cを見出した。各分子のノックダウンもまた、リーリン誘導型神経細胞凝集塊を異形態にすることを見出した。これらの結果により、リーリンによる細胞凝集形成機構において、リーリン-受容体-Dab1-PI3K-Girdin, Arl4c-N-カドヘリンとシグナル伝達が起こる可能性が示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)