P型ATPaseによる能動輸送とその制御機構の構造生物学
【研究キーワード】
構造生物学 / イオンポンプ / カルシウムポンプ / ナトリウムポンプ / 膜蛋白質 / 能動輸送 / 結晶解析
【研究成果の概要】
本研究は、P型ATPase(ポンプ)による能動輸送機構を原子構造に基づいて解明し、究極的には「何故そういう構造が必要なのか」「構造変化を起こす(或いは妨げる)機構はどのようなものか」を理解することを目指している。
最も研究が進んでいる筋小胞体Ca2+ポンプに関しては、特に生理的濃度のCa2+存在下低pHでの結晶構造の解析を進めた。これまでに得られたE1・2Ca2+状態の構造は高濃度(10-100 mM)のCa2+存在下で得られたものであり、生理的条件とは著しく異なっていた。また、低pHで安定化されるE2・nH+状態にCa2+が結合したときはH+が結合したままである可能性もあった。得られた構造では、2個のCa2+の配位そのものは高濃度Ca2+存在下の構造と同一であったが、Aドメインは本体から外れており、そのままでは次のステップに行けないことがわかった。すなわち、「自己燐酸化におけるAドメインの役割は何か」「Aドメインが正しい位置にないと何故自己燐酸化は起きえないか」を解明する必要がある。
Na+ポンプに関しては、E1・3Na+状態の構造決定に加え、種々の強心ステロイドとの複合体の結晶構造解析研究の完成に注力した。強心ステロイドは2世紀以上にわたって心不全に対し処方されてきたが、Na+ポンプの強力阻害剤でもあり、使いにくいものであった。そのため、組織特異的な薬剤の開発が待たれていたが、本研究により重要な指針を与えることができた。さらに、予想外であったが、bufalinを結合させた結晶をRb+を含む溶液に浸漬することにより、1個のK+と1個のMg2+を結合した状態を作り得ることが判明し、2個のK+の順序だった結合過程と強心ステロイドによる阻害メカニズムを明らかにすることができた。以上の結果をPNAS誌に報告した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
椛島 佳樹 | 東京大学 | 定量生命科学研究所 | 特任助教 | (Kakenデータベース) |
金井 隆太 | 東京大学 | 定量生命科学研究所 | 特任助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2019-04-01 - 2022-03-31
【配分額】45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)