超磁歪振動素子による両耳骨導聴覚認知の研究
【研究分野】耳鼻咽喉科学
【研究キーワード】
骨導 / ABR / 超磁歪振動子 / 超音波 / 方向感 / 時間差 / 音圧差 / 聴覚認知 / 超磁歪振動素子
【研究成果の概要】
超磁歪デバイスを用いた軽量型の両側骨導補聴器をフレェイ社と共同開発した。これを用いてその性能を動物実験とヒトでの実験を行った。
動物実験:ラットを対象に超磁歪骨導デバイスを頭蓋骨に埋めたビスを通して周波数別の刺激を与えた。比較のために日常の聴力検査で使われているオーチコン社の骨導端子を用いた。刺激音はトーンバースを用い、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、1万Hz、2万Hz、3万Hzについて周波数別のABRを記録した。その結果、広く使われているオーチコン社の骨導端子は500Hz〜1kHzまでしか良好なABRが記録できなかったのに対し、本研究のために開発した超磁歪型骨導端子は500Hz〜3kHzまで良好なABRが記録された。従って、超磁歪デバイスは3万Hzという超音波領域の刺激音が可能でかつABRが記録されるので低音域から超音波領域というヒトに比べ極めて幅広い周波数帯域に脳幹が反応することが証明された。逆に現在使われている骨導端子は500Hz〜1kHzという狭い領域しか脳幹が反応しないことを明らかにした。
ヒトでの実験:両耳聴検査の中で音像定位法を選択して行った。刺激音は500Hzバンドノイズを用いた。その超磁歪式骨導端子もオーチコン社製の骨導端子も両耳にあて、時間差と音圧差での検査をそれぞれ行った後、時間差・音圧差トレード検査を行った。その結果、時間差と音圧差では両方の骨導端子の差を認めなかった。しかし時間差・音圧差トレード検査では超磁歪型の骨導システムの方が現在広く使われているオーチコン社製の骨導システムより有意に優れていることがわかった。すなわち時間差あるいは音圧差検査という感覚レベルでは差はないが、時間差・音圧差トレードの認知レベルでは優れていることを示している。
以上、われわれの研究の結果、両耳超磁歪骨導補聴器は次世代の新しい両耳骨導システムとして期待できる。
【研究代表者】