ヒト皮膚皮下組織の動静脈の3次元的構築の解明
【研究分野】解剖学一般(含組織学・発生学)
【研究キーワード】
皮膚 / 皮下組織 / 血管解剖 / 動脈 / 静脈 / 三次元 / 血管造影 / 皮弁 / 3次元
【研究成果の概要】
ヒト皮膚皮下組織の血管解剖を3次元的にしかも動静脈の相互関係を明らかにすることを目的とした。本研究において、まず形成外科領域で多用される臍近傍の皮膚皮下組織を観察した。全身動脈造影および静脈系追加造影を施した標本を作成し肉眼的観察のみならず、X線学的に検討した。臍近傍の深下腹壁動脈穿通枝は、筋膜を貫通した後真皮直下まで大きな分枝を出さず到達し、真皮直下において本幹は上外側に向け分岐しながら長く走行していた。また、静脈系はその動脈に併走する静脈だけではなく、動脈の走行とは全く無関係な静脈系が存在し、この静脈系は伴行静脈系と皮膚皮下組織様々なレベルで交通していたが、その3次元的構造よりこの非伴行静脈系の役割は真皮を栄養した血液の環流経路であることが示唆された。この機能的役割からこの非伴行静脈系を皮静脈系と称すべきと考えられた。皮膚皮下組織の静脈系は皮静脈系と伴行静脈系の2種に大別され、この観点から全身の静脈系を体系化することが可能であると考えられた。また臍近傍においては、動静脈の立体構造より解剖学的にも皮弁の菲薄化は可能であることが示唆され、また皮静脈系を環流静脈系として使用することにより臨床的に皮弁のデザインの幅が広がると考えられた。また、動脈のみの検索であるが、3次元構造として頸部の皮膚皮下組織について解析を行い、栄養する動脈の血管構築は3種類有ることが判明した。この中で広頚筋は固有の栄養血管をもっておらず、皮膚へ行く枝から小枝を受け栄養されていることが判明し、従来広頚筋皮弁は筋皮弁とされてきたが、血管構築上筋膜皮弁に分類されるべきであることがわかった。さらに本研究においては、血管構築の3次元表示として、マイクロCTによるX線撮影が非常に有用であることが判明した。コンピューター上に血管像を動画として回転させることにより一般の人でも理解しやすいものになったと考えられる。
【研究代表者】